山王日枝神社(千代田区永田町)境内に末社の「八坂神社」が鎮座している(写真下)。かつて南伝馬町(現京橋1~3丁目の中央通り両側)の鎮守神だった天王社一の宮を受け継ぐ社である。大伝馬町の二の宮、小伝馬町(のち小舟町)の三の宮とともに江戸三天王の一角をなし、「江戸名所図会」に祇園会御旅所として賑いぶりが描かれている。
祭神は牛頭天王とスサノウノミコトで江戸期以前から商業・農業の守護神、厄病退治の信仰に篤いとされ、江戸期の三天王社は神田神社の境内に鎮座していた。明治18年(1885)に神田神社が火事に見舞われ、天王社も焼失したことで、南伝馬町氏子らが日枝神社境内にこの八坂神社を勧請した。
旧社に文政3年(1820)奉納の狛犬(写真下右端)と石燈籠は、明治34年(1885)に神田神社から移転設置された。燈籠には「天王宮」(写真左)「南伝馬町」(写真右)と刻まれていて、当時の人々の思いが語りかけてくれる。@巻渕彰