大名茶人として名高い松江藩主松平不昧(1751-1818)が没して200年になる今年、地元の松江市では「不昧公200年祭」の企画が盛りだくさんのようですが、東京でも不昧公由来の美術品を多く所蔵している美術館、畠山美術館は4月7日から、そして21日からこちら三井記念美術館でも始まっています。「不昧は書画、名物道具、調度品など名品を数多く蒐集し、今日では国宝や重文に指定されているものも多数あります。今回は不昧が愛蔵した名品の数々、さらに不昧像が窺われる自筆の書画や好んで作らせた器なども紹介」(展覧会パンフ)する企画です。名品を蒐集したのも勿論素晴らしいことですが、さらに凄いのは自身のコレクションを記した「雲州蔵帳」と茶碗・茶入れなど茶道具中心の名物を図説と共に実証的に記載した「古今名物類聚」18巻を著したことです。現在でも使われている中興名物・大名物・名物などの品および呼称はこの書によって定まりました。私が見たかったのは国宝の「大井戸茶碗・喜左衛門井戸」と重文の「赤楽茶碗・加賀光悦」だったのですが、美術館内に造られている茶室に(国宝の茶室「如庵」の写し)不昧の書「喝」が掛けられ、重文の赤楽茶碗「無一物」が設えてあり、あまりの素敵さにしばし見入ってしまいました。不昧公の掛物は得意とされていた「隷書体」のものが有名ですが、この「喝」は行書体ですが大迫力、余白とのバランスも素晴らしい。(不昧公に怒られているような気がします。欲しい)
展示の最後は「プロデューサーとしての不昧」でここには自分の美意識を反映させた道具を塗師・原羊遊斎や小島漆壺斎などに創作させたものが並んでいます。洒落た、趣味のいいとしか言いようのない道具たちです。良く知られている豆腐を描いた掛物に自らの画賛「世の中はまめで四角で和らかでとうふのようにあきられもせず」も出展されています。藩主を53歳で隠居して品川・大崎の松平家下屋敷に11棟の茶室を備えた茶苑を造成し茶の湯三昧の晩年を送りました。何とも羨ましいですね。
この茶苑はどうなったかといいますと黒船来航で品川沖警備が急務となった幕府に没収され跡形もなくなってしまったとのこと。お墓は芝・天徳寺から関東大震災後に護国寺に移されています。(この間お参りしてきました)
「大名茶人・松平不昧」展
三井記念美術館 6月17日まで 10時―17時休館日月曜
三越前駅A7出口1分三井本館7階