永代通りを日本橋交差点に向かって行くと昭和通りの手前に「千代田橋」があります。関東大震災後(大正12年)の大規模な復興計画で永代通りが作られたときに、当時ここを流れていた楓川を渡る橋としてかけられました。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
和菓子の「ときわ木」さんが楓川沿いに創業したのは明治43年(1910年)といいますから、千代田橋が架けられる10年以上も前ということになります。一旦、昭和通り沿いにお店を移したものの、その後再び現在の地に戻られたそうです。今の包み紙には「千代田はし ときわ木」と記され、刻み続けた歴史を感じます。
現在は3代目、気さくなご夫婦がお店を継がれています。
▲ときわ木さんの包み紙には「千代田はし」の文字が
ときわ木さんにはショーケースに並んだお菓子はありません。重箱に入れられた数種類の和菓子を見せていただき、お客様はその中から選ぶのです。創業時から続けている販売方法だそうです。
▲写真を撮りやすいようにと、下の台に広げていただきました
5月までは「柏餅」、花は「ぼたん」の和菓子、6月に入ると「水ようかん」、花は「あやめ」のお菓子など、商品は季節ごとに変わりますので、重箱の中の新商品への期待に、お店を訪れる楽しみも増していきます。
▲この日のラインナップ
▲6月は水ようかんの季節!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
今回は、私が5月末に購入したオリジナル和菓子「若紫」をご紹介します。小豆、手亡豆、砂糖から作られた、まさに若紫色のお菓子です。
▲版画家・福田久哉先生の描いた少女のイラストが素敵です!
残念なのは着色料(赤色3号)を使っていることです。このタール色素、アメリカやヨーロッパの一部の国では食品への使用が禁止されているもの。これを使わないと「若紫」ののきれいな色は出ないのかなぁ‥‥。
でも、口の中で儚くもサラッと溶けてなくなる舌触りと上品な甘みは、和菓子ファンならずとも、一度は味わっていただきたい商品です。
この「若紫」、購入には予約が必要です。予約した日の翌週の木・金曜日に受け取ることができます。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
箱を開けると、一面に敷き詰められた長方形の若紫の菓子。幾何学的な切られた15片が入っています。これは箱の懸け紙に描かれたイラストにあるような、昔の女性の着物の袖の形をイメージしているそうです。
▲この形! どうやって切っているの?
どうやって作っているのでしょう。箱の大きさの長方形に固めるところまではわかります。問題は切り方です。一つ一つの形は違っても体積は同じように見えます。切り口を見ると刃を入れた様子がわかります。長方形の板に刃を打ち込んで作った抜き型か、切る図形に合わせて張って固定したピアノ線で一気に押し切るのかもしれない‥‥。それにしては鋭角の部分までしっかり形が出ているし、う~む‥‥。
▲「若紫」の一片
予約していた「若紫」を受け取りに行ったとき、その方法を伺ってビックリ! さすが匠の技! あっ、これ以上は秘密にしておくことにします。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
皆さんも「若紫」を購入されたら、実際にカットを見て、その方法をあれこれ想像してみてください。そして、このお菓子の上品な甘み、舌触りを味わってください。少し濃い目に入れた煎茶がお薦めですが、ブラックコーヒーにもよく合います。また、大切な方への手土産としても最適だと思います。
次回、私は「黒饅頭」を買うつもりです。
※「若紫」は夏の暑い時期はつくられていないようです。お求めの際はお店に確認してください。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
▲お店は、大通りから少し入ったところにひっそりと‥‥
店名:御菓子司 ときわ木
住所:東京都中央区日本橋1-15-4
TEL:03-3271-9180
営業時間:9:30~17:30
定休日:土・日・祝日
「若紫」小2,750円(税込)、大3,300 円(税込)