銀座5丁目5-11。
みゆき通りから北に入った路地にその集団はいました。
明治から昭和の古風な衣装を身に着け、スマホやデジカメにポーズをとって雰囲気を創り出します。
どこで手に入れた品物なのでしょうか。
古着屋からの掘り出し物。
それとも、おじいちゃん・おばあちゃんが愛用していた、若かりし頃の輝ける衣装でしょうか。
セピア色の写真から抜け出して来たようです。
カフェの女給さんかな。いや、与謝野晶子風、樋口一葉風、泉鏡花風。
ブラウン系のマントを来ているのは、太宰治なのでしょう。
ご本人はそのつもりなのでしょうが、どうも判別不明な人物もいます。
彼らを引き寄せているスポットが、文人が足しげく通った老舗バー「ルパン」なのです。
路地を覗くと、シルクハットに片眼鏡をかけたアルセーヌ・ルパンの看板が存在を主張しています。
太宰が写真家林忠彦氏に撮らせた、バーカウンターの椅子で足を組む写真。
太宰の代表的な写真を生み出す、二人の出会いの場でもありました。
コスプレ集団は、太宰の足跡を求めて、路地に引き寄せられていたのです。
どうやら、若いコスプレイヤーを活性化させたのは、「文豪ストレイドッグス」という漫画です。
文豪をキャラクター化し、作品名を冠した異能力で戦うバトルアクション。
太宰が駆使する異能力は「人間失格」。
直接触れると、あらゆる異能力を無効にしてしまう能力です。
現実でも「人間失格」には、読み手の頭の中をかき乱す特殊効果が込められていますよね。
他の文豪も、彼らの作品にちなんだ異能力を繰り出すのです。
入学試験に近代文学史的な出題があるのならば、この漫画でアウトラインを押さえられそう。
数年前に冬の津軽を旅しました。
斜陽館の近くにある津軽三味線会館の展示コーナーの隅に、黒マントと角巻を見つけました。
見ただけという手はありません。
さっそく、着用。
しばれる寒さが、太宰っぽさを醸し出してくれました。
6月19日は「桜桃忌」。
70年になるのですね。
映画や漫画のヒットともあいまって、三鷹の禅林寺には、海外からのファンも訪れるとの事。
それから、言っておきますが、私、太宰の作品は、好きではありません。