[下町トム]
2013年7月26日 09:00
中央区にお住まいされている方、あるいは勤められている方の中から、素敵な人をご紹介することにしています。今回は第3回目です。
お訪ねしたのは、銀座2丁目にオフィスを構える「飯沼総合法律事務所」の顧問であり、法学博士である胡健芳さんです。
銀座のメインストリートにひときわ眼を引くオシャレな〔ティファニー〕のビル。その7階に「飯沼総合法律事務所」が入居されています。ある日の夕方、こちらに胡さんをお訪ねしたところ、気さくにインタビューに応じていただきました。にこやかに丁寧に対応していただいたので、少し緊張していたぼくの気持ちもすっかり和らぎました。
胡さんは、中国・上海のご出身。名門・復旦大学をご卒業後、海外への留学を決意されました。米国、豪州、日本の3国に絞り込んだ結果、日本に決められたそうです。日本を選んでいただき、嬉しく思います。ただ留学前には日本のことをそんなに詳しく知っていたわけではなく、日本語もほとんど話せなかったそうです。そんななか勇気をもって決断し実行された行動力に頭が下がります。
日本では上智大学で法学を学ばれました。大変良い先生にめぐり合えたそうです。その後も法律の勉強を続けられ、今では、諸外国とのビジネスにおける契約のアドバイスやコンサルティングを主なお仕事にされているとのことです。著書もいくつか上梓されています。海外ビジネスがますます進化する現代においてはご活躍の場が一層拡がっているようです。
トム 「海外でのビジネス展開において必要な考え方はどのようなものでしょうか?」
胡さん 「哲学+ビジネス+法律の3つがきちんとつながることです」
トム 「そうですね。うっかりすると目先の利益に眼を奪われて本当にやりたかったことを見失うことにもなりかねませんね。〝哲学〟って大事ですね」
胡さん 「そのとおりです。何か迷ったら一度原点に戻って考えてみるということが大切です。すなわち〝哲学〟の無いビジネスは長続きしません」
胡さんは「ビジネスには〝哲学〟が大事」とおっしゃるように、普遍的な価値について深く考察されているようにお見受けしました。事実、高校時代から興味があったという「兵法」をどうビジネスに生かせないかと思案されているとのことです。日本でもよく知られている「孫子の兵法」のほか、有名な「兵法三十六計」の一部を教えていただきました。36のうちの一つ「抛磚引玉」というものは「価値の無いものを敵に渡して、価値の高いものを手に入れる」という意味だそうですが、確かに現代の外交やビジネスでも使える教訓だと思います。ちなみに「三十六計逃げるに如かず」という言い草はこの兵法には直接関係無く、恐らく誰かが「兵法どころかとにかく逃げろ」というような意味で用いたもののようです。
胡さんと話していると、けっこう話が弾んで、とてもリラックスした気分にさせていただけました。胡さんのお人柄だと思います。日中間では政治的にはギクシャクした部分もありますが、こうして身近なところから心を開いて交流することの重要性を再認識しました。隣国同士なんですから〝日中友好〟を進めたいものです。
帰りがけに胡さんに〝おすすめのランチスポット〟を教えていただきました。同じ銀座2丁目にある〔ミキモトブティック〕3階にある〔ミキモトラウンジ〕。1,500円でゆったりと豊かなランチタイムを愉しめるとのことです。う~ん、確かに素敵そうだけど、男一人では入りにくい感じがします。でも一度訪れてみようと思いました。
胡さんとの爽やかな会話を終えて銀座の町に足を踏み出せば、夏の宵の薄明るさの中に都会のおしゃれなセンスが風に舞っていました。
[下町トム]
2013年6月26日 14:00
中央区にお住まいされている方、あるいは勤められている方の中で、自身が出逢って感銘を受けた人や共感した人などをご紹介していきたいと思います。
第2回の今回は、東銀座駅近くの飲食店で店長を務められている宮下正幸さんです。
築地の〔ADK松竹スクエア〕は近代的なフォルムが美しく、一階ロビーの開放感もとてもお気に入りです。大階段も印象的です。時々ドラマのロケにも使われています。
ここにはかつて松竹の映画館があって、〝寅さん〟シリーズ全盛の頃は多くのシネマファンが通っていました。今では飲食店とオフィスの入居するビルですが、3階には「松竹大谷図書館」があり、歌舞伎を中心に専門書や資料が収蔵される貴重な施設があります。
今日はこのビルの2階にある〔串焼・炭火焼肉 Yagura〕をお訪ねします。前述の1階ロビーからエスカレータをあがると、ゆったりとした導線の先に落ち着いたエントランスが見えてきます。和風のセンスを活かしたしっとりとした雰囲気は、仕事の得意先との商談だけではなく、家族団らんにもピッタリです。
店長の宮下さんはタフで優しいリーダーとして従業員の皆さんに慕われています。ほとんど休みなしにこの店を守り立てるために頑張っていらっしゃいます。いつ訪れても笑顔を絶やさず、お人柄はソフトですが、店内の隅々まで眼を光らせて状況把握されている姿は厳しいプロフェッショナルを感じます。
宮下さんの座右の銘は「公認無私」だそうです。何でも昭和天皇のお言葉だそうですが、意味合いとしては自らのわがままを捨ててみんなのために尽くすということかと思います。ホスピタリティの意訳としてその世界の権威である力石寛夫さんが取り上げていらっしゃったとも伺いました。いずれにしても、サービス業の原点である「おもてなしの心」を追求し、それをどう形にするかを宮下さんは考え続けているんだな、と実感しました。
最後にお店を出るときに玄関口まで見送ってくださった宮下さんは、短くても心のこもった挨拶をして下さいました。いただいた食事にはもちろん満足しましたが、やっぱり食事は良い環境でいただくことが大切だと納得しました。お店の皆さん、お世話になりありがとうございました。
[下町トム]
2013年6月10日 08:00
築地の波除神社の祭礼は毎年6月上旬に開催されます。そもそも「夏越の祭り」として脈々と受け継がれてきました。大きな獅子頭を神輿に仕立てて練り歩くところから「獅子祭り」として知られています。
本祭りは3年に一度と決まっており、昨年実施されました。したがって今年はいわゆる〝陰祭り〟です。それでも日曜日には本社神輿が各町内を巡行します。築地のみんなが楽しみにしている夏のイベントです。
メインイベントのほうはきっとどなたかがレポートしていただけると思いますので、8日(土)に催された〝子供神輿連合渡御〟の模様をお伝えします。
当日午後三時に、築地本願寺脇から出発した子供神輿や山車の一行はぐるっと各町内を巡りながら、波除神社へ。ここで神職に御祓いを受け、休憩した後、各町内へ戻っていきます。
都会の真ん中なのに、大勢の子供たちが集まってきて賑やかです。中央区は今子供の人口も増えているんですね。子供の歓声は本当に気持ちが和みます。
神社の前を出発する際には、子供たちの代表が台の上に並んで拍子木を打ちます。一般に祭りでは「柝(き)を入れる」といいます。こどもたちは緊張した面持ちながらもしっかりと締めの柝(き)を入れ、後半のスタートを切りました。
ひときわ気合の入るひとときです。
子供神輿はサイズは小さいといえども、大きな神輿と同様に本職の技と細工が施されています。これを子供たちが「わっしょい。わっしょい」との掛け声も勇ましく進んでいくさまは、微笑ましくもあり、頼もしくもあり、というところです。
ひととおり、巡行が終わって解散となると、子供たちはホッとして親の手に引かれて帰っていきます。
こうして伝統行事が世代を超えてしっかりとつながっていくことは嬉しいことです。そして、地域社会の交流が広がることの有意義さと大切さを改めて感じました。
[下町トム]
2013年5月 9日 14:00
中央区には素晴らしい場所がたくさんあると同時に、素晴らしい人が多くいらっしゃいます。これから時々、区内を巡って素敵な方にお会いしてのお話を紹介していきたいと思います。
今回、第1回は新富町に出かけました。
中央区は文化・芸術に関する歴史と伝統を有する町であることは皆さんも既にご存知のとおりですが、初回は〝音楽〟に関する魅力あるスポットと魅力ある人物をご紹介します。銀座から築地界隈にかけては音楽スポットがさくさんあります。
新富町にある〔DYNAUDIO JAPAN〕はデンマーク製のオーディオ機器の輸入販売代理店です。音楽の好きな方はその機材にもこだわりを持つと思いますが、ここの会社が扱う機器、なかでもスピーカは永年蓄積されたノウハウを生かして、北欧らしく頑なにデザインやコンセプトを大切にする専門メーカーの品として、愛好者の間では深い支持を得ているようです。中央区は古くから外国の新しく先進的な文化を受け容れてきた土地ですので、このような海外の良い品を認める人も多いのではないでしょうか。
同社の社長である前田正人さんにお話をうかがいました。そもそも12年ほど前に「本当に良い物を届けたい」という責任感をもとに創業されたところ、そのうちに実物を確かめる場所を望む愛好者に応えて、3年前にショールームを開設されたそうです。
最近はインターネットを通じていくらでも音楽をダウンロードできますし、携帯メディアの発達で、じっくり音楽を聴く人が減ったのでは無いかと危惧していましたが、前田さんいわく「逆に、きちんとした音楽を聴きたいという人は増えていますよ」とのことです。実際に聴かせてもらいましたが、その音の厚みや柔らかさには素人のぼくでも圧倒されました。
しかし、「音楽なんて聴こえればいい」というような安易な考えもあるのではないかと、しつこく尋ねたところ「はじめは試しにでもいいから良いスピーカで聴いてもらって、そこから目覚めていただければいい」と、とても寛容なお言葉でした。
さらに「やっぱりこれだけの機器で聴くのはクラシックですかねぇ」と質問したら「必ずしもこだわらなくてもいいんですよ。好きなものを聴けばいいのです。ポップスでも演歌でも、好きな音楽を良い環境で聴いてみることが大事です」という言葉の深さに感激しました。
前田さんは、この場所で〔onandon〕という別の会社も設けられており、主にスタジオ運営やあらゆる音楽の創作をサポートされています。都心のビルの地下になんとも落ち着く場所があって、驚きました。ご相談すれば、条件次第でいろいろなイベントにお借りすることも可能だそうです。
お話を聴いていて思ったことは、「この方は音楽を本当に愛していらっしゃるんだなぁ。そして、人とのふれあいがお好きなんだなぁ」ということです。そんな愛情あふれるスタジオを拝見して、中央区にまたひとつ音楽の花開く場所を見つけてホッとした一日でした。
[下町トム]
2013年4月 9日 17:00
4月8日は「花祭り」です。お釈迦様の誕生日をお祝いする日です。仏教徒にとっての重要な記念日であるというだけではなく、昔から春の民間行事として親しまれてきました。
そもそも「花祭り」というのは俗称であって、正式には「潅仏会」(かんぶつえ)とか「降誕会」(こうたんえ)とか称するものです。詳しくは知らないのですが、この4月8日という日付にも諸説があるようです。ただ、中華圏ではこの日が古来より仏陀の降誕の日と定められており、日本にも仏教伝来とともに広がったようです。
もともとは旧暦での行事ですから、もっと夏に近い時季のはずですが、日本では新暦移行とともにそのまま4月8日が踏襲されました。ちょうど桜の季節と重なることから「花祭り」と呼ばれるようになったようです。
〔築地本願寺〕では毎年4月8日に近い日曜日に、盛大にフェスティバルとして開催されています。今年は7日(日)の予定でしたが、あいにくの雨と強風に備えて早々に中止が決まりました。本来なら稚児行列やミニ動物園なども実施されていたところで、楽しみにしていた皆さんにとっては残念でした。また来年を楽しみにしましょう。
浄土真宗系の寺院では、昨年から今年にかけて「親鸞聖人750回遠忌法要」が営まれています。〔築地本願寺〕でも4月27日~30日に催されます。また、これにあわせて、4月27日~5月3日には「築地春まつり」として場外市場での特売の企画などが予定されています。大型連休の時期でもありますので、是非一度築地に足をお運び下さい。http://www.tokyochuo.net/news/latest/images/130318/pdf01.pdf
春盛んな築地の町の賑わいを感じながらのご報告でした。