小江戸板橋

塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

この景色だったのか。

昭和15年、勝鬨橋が開通。

築地と月島を結び、隅田川の最下流に架けられた。

当時の技術の粋を結集して作り上げられた、東洋一の可動橋である。

勝鬨橋は中央部がハの字型に開き、行き来する船舶の航行を確保する。

橋を跳ね上げるための操作をするのが、この部屋なのだ。

当時のままのメーターとスイッチが並ぶ制御盤。配電盤。

 

85年の時空を経て目の前に展開する、古いながらも実用性の高いデザインの機器類に、知らず知らず鼓動が早くなった。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

操作室であるこの塔屋は、まるで西洋の城砦である。

橋の中央四隅に配置された橋脚塔四棟のありさまは、城の堅固さと重厚さを更に高めている。

今回、この塔の中に、入ることができたのである。

「橋脚内見学ツアー」

「橋脚内見学ツアー」 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

当選したのだ。

東京都道路整備保全公社が行う「橋脚内見学ツアー」に。

先輩特派員もツアーの様子をブログに載せていらしたが、橋を渡るたびに是非私も参加してみたいと思っていた。

高倍率の中で、抽選に当たったというメールが届いた時から、遠足を待つ幼稚園児のようにワクワクが続いていた。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

交通量の多い橋の橋脚に潜り込むこのツアーには、受信機付きヘルメットと軍手は必需品である。

「かちどき 橋の資料館」で、ビデオによる橋梁の概要を学び、オリエンテーションを経て橋脚へと向かう。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

橋脚内に入るために3.5mの梯子を垂直に昇降する。

そのため、落下防止の安全装置を着用する。

フル装備になると、古城探検の気分が強くなった。

橋脚内跳開設備

橋脚内跳開設備 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

橋が開く構造をわかり易く示した図がある。

可動桁は、回転軸であるトラニオンで支持されている。

直流モーターで軸を回転させ、歯車を通して橋は開いていく。

可動桁の重量は約900t。

開閉するときにバランスをとるため、橋脚内部に約1,100tのカウンターウエイトを設置している。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

カウンターウエイト

コンクリートや鉄や鉛の塊などからできている。

橋が70秒かけて、70度まで開くための絶妙なバランスをとる重要な装置である。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

ストッパー。

カウンターウエイトが橋脚躯体に直接ぶつからないように設置されている。

この大きさ、奥行きが、約2,000tの加重を受け止めるのだ。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

トラニオン軸

橋を開閉し、支えるための軸である。

橋が開いた際には、下の空間は降りてきたカウンターウエイトで、隙間がふさがれてしまう。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

モーター、クラッチ、ブレーキなど

地下空間にある橋脚内部の機械室。

この機器の並び。

なんと美しいのだ。

しばし、見とれてしまった。

 

 塔屋の東側窓より可動桁を見ゆ!

 

熱い気持ちを抑えて、「かちどき 橋の資料館」に戻る。

直接、実物を見てきたことにより、橋にかかわる展示物への理解が進んだように思えた。

 

昭和8年6月10日から昭和15年6月14日までの工事期間を経て完成した「勝鬨橋」

昭和45年11月29日を最後に、道路交通量の増加と舟運の減少に伴い、開閉を中止。

平成19年6月18日、大規模かつ技術的完成度の高い構造物として、国の重要文化財に指定された。