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日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

日本橋髙島屋S.C.本館(日本橋2-4-1)の4、5階にある「髙島屋史料館TOYKO」は、大阪市にある「髙島屋史料館」の分館として、2019年3月にオープンした史料館です。

4階の展示室ではさまざまなテーマの企画展示が行われていますが、きょうは、ここで現在開催されている「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」という企画展をご紹介したいと思います!

企画展「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」
監 修  五十嵐 太郎(建築史・建築評論/東北大学大学院教授)
展示期間 2020年9月2日(水) -2021年2月21日(日)
      ※本展は会期が変更されました。
開館時間 11:00~19:00
休館日  月・火曜日
入館料  無料
展示場所 高島屋史料館TOKYO 4階展示室
      ※5階旧貴賓室は、セミナー開催時のみ開館
主 催  高島屋史料館TOKYO

さっそく会場へ…

さっそく会場へ… 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

(会場内の撮影は禁止となっております。今回、特別に許可を戴いて撮影させていただきました!)

さっそく本館4階の会場に入ってみましょう。
まず目を惹くのは、現在の大栄不動産ビル(日本橋室町1-1-8)の位置に1987年まで建っていた「日本帝国製麻本社ビル」の模型です。レンガ造りの外観が魅力的なこの建築は、日本橋川に面した側のほうが逆側よりも凝った装飾になっており、川に向けた建築だった…ということがよくわかる模型になっています。

そして、この企画展のメインは、奥の壁にずらっと並べて掲げられた、日本橋エリアの近代建築の「装飾」の写真とその解説です。
髙島屋本館だけでなく、日本銀行本店本館、三井本館、日本橋三越本館、日本橋野村ビルディングなど、日本橋エリアの名だたる近代建築が紹介されており、展示内容が非常に豊富です。
それぞれの建築が細かいディティールまで練られて考えられていること、日本の伝統も組み込むなど、西洋の古典的な建築をベースにしつつオリジナルの意匠が発展しているということがよくわかります。

展示はそれだけではありません。左奥の壁には、髙島屋の本館が東京日本生命館(1933年竣工)として建てられた当時の高橋貞太郎先生による設計図面(手書きなのにすごく緻密で綺麗!)が展示されているほか、
写真に写っていない壁面では昔建っていた近代建築の装飾の一部分だけを保存して使っている戦後の建築や、戦前の近代建築との意匠の連続性を意識した近年の再開発ビルについても解説され、さらに、髙島屋で過去に開催された展覧会に関してパネル・模型などを使った展示が行われています。

小さな展示室ながら、非常に充実した内容で、私はじっくり見ていたら1時間近く滞在してしまいました…!

配布されている「日本橋建築めぐり」マップをGETしよう!

配布されている「日本橋建築めぐり」マップをGETしよう! 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

さて、この企画展のもう一つの目玉は、無料で配布されている「日本橋建築めぐり」マップです。

オモテ面には、日本橋の中央通り沿いを中心とした街並み、主要な建築物とその解説が、すてきなイラストで描かれています。

 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

そして、ウラ面を見てみると、オモテ面で紹介している建築物の装飾のイラストとそれぞれの解説がずらーっと並んでいて、「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展の復習をすることができます。

単なる読み物としてだけでなく、これを持って日本橋エリアの建築をめぐれば、楽しみが倍増すること間違いなしです!

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 1.髙島屋本館のヴォールト式格天井

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 1.髙島屋本館のヴォールト式格天井 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

実際にいくつかの「装飾」をめぐってみましょう。
たとえば、髙島屋本館1階のエレベーター前の空間は、西洋風のヴォールト式天井(かまぼこ型に湾曲した天井)になっています。
一方で、この天井は格天井(ワッフルのような格子状の形をした天井)でもありますが、その格子の交点には和風の菊の紋様の装飾がつけられています。
すなわち、象徴的なエレベーターホールの天井が和洋折衷の意匠で作られていることがわかります!

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 2.髙島屋本館の垂木

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 2.髙島屋本館の垂木 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

つぎに、髙島屋本館を外から見てみましょう。
建物上部の軒下の部分に、細かい棒状の装飾が並んでついていることがわかります。
これは、日本の伝統的な木造建築で屋根を支えるためにつけられる「垂木(たるき)」を模した装飾です。
コンクリート造の軒には垂木は必要ないので、装飾として敢えてつけられているものになります。これも和洋折衷の意匠と言えますね。

 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

ちなみに、日本の木造建築における実際の垂木の例はこの写真のようなものです。(文京区にある「傳通院」の山門)
この垂木は狭い間隔で並べられる「繁垂木」ですが、日本橋髙島屋本館軒下の装飾も繁垂木状になっています。

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 3.日銀本店・三井本館の列柱

マップを片手に日本橋「装飾」めぐり — 3.日銀本店・三井本館の列柱 日本橋エリアの建築を”装飾”に着目しながら見てまわろう —「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展

日本橋の北側まで足を延ばすと、「日銀通り」を挟んで、1896年竣工(日銀通りに面した部分は1938年竣工)の日本銀行本店本館(日本橋本石町2-1-1)と、1929年竣工の三井本館(日本橋室町2-1-1)が向き合っています。
この2つの近代建築はいずれもコリント式の大オーダーの列柱」が大きな特徴となっていますが、その装飾を比べてみると色々な違いが見られます。
柱身部分を比べてみると、三井本館は彫り込みがあって陰影がつけられているのに対し、日銀本館は彫り込みが無くシンプルな印象です。
アカンサスの葉っぱを模した豊かな装飾が施される柱頭部を比べてみると、三井本館は葉っぱに厚みを持たせた立体感のある装飾が特徴ですが、日銀本館は三井本館のような細かく裂けた葉っぱの装飾が無いかわりに、葉脈が彫られているのが特徴です。

建築の細部の奥深さに気がつきます

こんな風に、企画展の展示内容や配布されているマップの解説を踏まえながら日本橋エリアを歩いていると、一日あっても回り切れないくらい色々な発見と学びがあります。

建築物は大きな構造物なので、日常的に使っていない限り細かい部分にはなかなか目が行かないものですが、ふと注目してみるとそこには奥深い世界が広がっている…ということを実感しました。
企画展は来年2月まで開催が予定されているので、ぜひ、街歩きとセットでお楽しみください!