しばしばしばた

近いうちに見納め? ― 旧「村井銀行」の入口

日本橋の南詰にある日本橋御幸ビル(日本橋1丁目7-17、1975年竣工)。
建物全体を覆う赤いタイルが特徴的なこの建物ですが、「日本橋野村ビルディング」と相対する建物北側に、唐突に重厚な石造りの入口が設置されているのが、近くを通るたびにずーっと気になっていました。

…そんな疑問が、前回の記事でご紹介した「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」展を見ていて解けました。
なんとこの入口は、もともとこの場所に建っていた村井銀行」(1913年竣工)の建物南側にあった入口を再利用したものなのだそうです。
関係者でないので中に入って見ることはできませんが、建物内部では柱や手摺子なども再利用されているとのことです。後世の建物の中に、昔建っていた建物の記憶が埋め込まれているのですね。

村井銀行の入口を見に行くなら今のうち!

村井銀行の入口を見に行くなら今のうち! 近いうちに見納め? ― 旧「村井銀行」の入口

そんな謎が一つ解けたところですが、諸行無常なお知らせが…
日本橋御幸ビルを含む「日本橋一丁目中地区」では、2025年完成を目指した市街地再開発事業が予定されています。

高さ287mと中央区で最も高い超高層ビルが建てられ、日本橋川の上を走る首都高速の地下化も計画されるなど、大規模かつシンボリックな再開発事業となっていますが、事業区域内の既存の建物は、「日本橋野村ビル旧館」(1930年竣工)のみが改修され残される他は、日本橋御幸ビルも含めてすべて解体される予定です。

エリア内では、既に老舗ふとん店の「日本橋西川」さんが隣の街区のコレド日本橋に移転、洋食の名店「たいめいけん」さんは一時休業(来年から日本橋室町の仮店舗で再開予定)しています。
11月1日からはエリア内の区道の一部が通行できなくなり、同月内には建物の解体工事も始まる予定です。

1975年の建て替えでは部分的な保存が行われた村井銀行の入口ですが、2025年の建て替えでどのような運命を辿るかはわかりません。
ひょっとするとこの10~11月で見納めになってしまう可能性も高いので、皆様の記憶に刻んでおくなら今のうちです!