築地の名物建築を名残惜しむ
築地の首都高速道路環状線わきにひときわ特徴的なフォルムを見せてくれているのは「電通旧本社ビル」です。東京都庁舎の設計も手掛けた丹下健三氏がデザインし、1967(昭和42)年に大林組の建築工事により竣工しました。長く電通の本社ビルとして使われ、2002年に同社の本社が移転した後もグループ会社が入居し、2014年まで供用されました。電通グループの従業員の方々が昼休みやアフターファイブに築地界隈でにぎやかに食事されていたのも懐かしい光景です。
電通の名物社長と言われた吉田秀雄氏の肝いりで、築地地区の大々的な都市開発の拠点として構想されましたが、ご本人はビルの完成前にお亡くなりになっています。当時は大阪万博を控えて新しい時代を展望する都市計画が期待されていました。このビルは象徴的な建物でした。
このあたりには電通グループの所有するビルが数棟ありましたが、今は住友不動産の管理下にあり、近い将来まとめて再開発される計画となっています。したがって、これらのビルは今後徐々に取り壊しが始まります。「電通旧本社ビル」の思い出深い姿を見られるのはそう長くないかもしれません。
電通は現在港区汐留に本社ビルを構えていますが、最近の報道では売却を検討しているとか。新型コロナウィルスの影響で消費者行動や働き方が大きく変化していくとの見方が広がっており、その影響が大企業のファシリティ戦略にも及んできているのでしょうか。
かつての高度経済成長の華やかな時代を象徴する名物建築にノスタルジーさえ感じてしまいます。