重い葛籠(つづら)には、楽しいお宝がぎっしり。
「こんなに重い物を持って歩いてきたの。ぜったい、腰が痛くなるよ。」
私のからだを気遣いながらも、あきれる妻。
重い。
確かに持っているバッグのひもが手に食い込んでいました。
仕事の資料や文具を入れたバッグをもう片方の手に持っているのですから重さは倍。
途中でバッグを置き、左右持ち替えながら、何とか運び通しました。
「お土産に、大きくて重い葛籠と小さくて軽い葛籠、どちらをお持ちになりますか。」と尋ねられ、迷わず重い方を選んだ欲張り爺さんの気持ち、よく分かります。
爺さんは葛籠の中のお宝を想像して、ルンルン。
重さを忘れるくらい心が弾んでいたことでしょう。
家に運び込んだお宝は何でしょう。
「中央区沿革図集」京橋編、日本橋編、月島編の全3冊。
カバーの上から測ると、縦37.5cm、横26.5cm、3冊の幅約7.5cm。
体重計に載せると、6.4kg。
持ち上げるだけなら何でもないのですが、家まで運ぶとなるとおもりを持っているようなものですから、ズシッと腰にきます。
運ぶならば、車や自転車を使えば良かったでしょうに。
何も、3冊一緒に運ばなくても、1冊ずつにすればまだ楽だったじゃない。
おっしゃる通りなのですが、3冊そろっているのに1冊ずつ持ち帰るなんてまどろっこしいことができますか。
2022年12月4日にオープンした「本の森ちゅうおう」(新富1丁目13番14号)
中央区立郷土資料館はその中に併設されており、1階に常設展示室、2階に企画展示室と図書館の地域資料室があります。
2階で本の在庫を確かめると、係員の方が「本の中身をご覧になりますか。」と言ってくださいました。
少しでも早く入手したい私は「大丈夫です。3冊ください。」
「本の状態は、係員が確認しています。」
このお宝が3冊で2,500円。普通ならあり得ない値段。
私は、完売してしまうことを恐れていました。
それなのに、「よほど好きな人じゃないと、買わないんじゃないの。」本棚に入らず、床にまで溢れている本や資料を横目で見ながら、妻はさらりと言いました。
お宝の価値を理解してくれる人はいるはずです。
ほら、特派員ブログ1月25日9:00の「ようちゃん」さん。
やっぱり、3冊同時に購入されています。
重さより嬉しさの方が勝りますよね。
中央区教育委員会の長期に渡る輝ける活動に、敬意を表します。
何が面白いかですって。
たとえば、京橋編の57ページに記された「御府内沿革図書の築地之内(入船・湊・明石町)『元禄年中之形』」
現在の浅野内匠頭邸跡の案内板にも用いられている図ですが、浅野家の上屋敷が記されており、屋敷地の位置関係を読み取ることができます。
ここは赤穂事件の浅野内匠頭長矩が居住した場所です。
現在の明石町の聖路加国際大学や聖路加国際病院の一帯にあたります。
大名屋敷という広い土地があったことが、明石町界隈を明治元年に築地外国人居留地として活用し、学校や病院、教会などが集積する西洋文化の窓口として機能して行くのです。
浅野家の東隣が奥平美作守邸。
豊前国中津藩奥平家の中屋敷です。
江戸時代中期の安永3年、中津藩医であった前野良沢のもとに蘭学者たちが集まり、オランダ語の医学書「ターヘル・アナトミア」を翻訳し「解体新書」を出版します。
杉田玄白がその困難な作業過程を「蘭学事始」に表わしています。
また、中津藩出身の福沢諭吉がこの地で蘭学塾を開き、慶應義塾の礎を築きました。
蘭学事始地碑と慶應義塾発祥の地碑が隣り合って建てられています。
中央区エリア別ガイドマップ「築地」中央観光協会(2021年3月発行)より抜粋
地図やその解説を読みながら、土地の変遷をたどったり、時空を超えた想像を巡らしてみます。
なんとまぁ、優雅な時間を過ごせるではないですか。
ちなみに、上に掲げた地図上に記されている「中央区郷土天文館(タイムドーム明石)」が、「本の森ちゅうおう」に移転し、「中央区立郷土資料館」として多彩なデジタル展示を用いて生まれ変わっているのです。
※ 「本の森ちゅうおう」については、Hanesさんが特派員ブログ2023年1月4日12:00に、概要をまとめてくださっています。
部屋に積まれた私の本と資料について、妻とお嫁ちゃんが不穏な会話をしているのを聞いてしまいました。
「ここ、片付けたいわね。」
「言ってくれれば、私、全部捨てちゃいますよ。」
やめて、止めて。
自分でちゃんと片付けますから。