2023 春の柔らかな伝統色「山吹」
浜離宮恩賜庭園のボタン園奥、花木園などに植栽されている「ヤマブキ(山吹)」が開花中です。 青空の下、芽吹いた緑に包まれ、しなやかな枝に鮮やかな "山吹色" の花をたくさん付け、風に揺らぐ様は、春色の景観です。 ヤマブキはバラ科の落葉低木で日本全土に野生します。 花は5弁の一重咲きと園芸種の八重咲きがあり、万葉集にも詠まれ、源氏物語にも登場するなど、古から親しまれてきました。 白花は「シロバナヤマブキ」と呼称されますが、近似の4弁花の「シロヤマブキ」は別属です。 八重咲きは、雌しべは花弁化、雄しべは退化し、後拾遺和歌集に収載の兼明親王の和歌「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに 無きぞ悲しき」に詠われているように、実を付けません。 ヤマブキの名の由来に関しては、細くしなやかな枝が風に揺れる様子「山振り(ヤマフリ)」転訛説、開花期にたくさんの黄花を付ける様子「山春黄(ヤマハルキ)」転訛説など諸説あるようです。 山吹色はヤマブキに由来する伝統色名。平安時代の女性の重ね着の配色美「襲色目(カサネイロメ)」の一つである「花山吹」は春の柔らかな雰囲気を表現しています。