「ゆるりと江戸であいやしょう!」「御存知鈴ヶ森」
ー七月大歌舞伎-
昨年8月の公演再開から1年経過しました。このコロナ禍での変則的な公演形式・客席配置も普通に感じるようになってしまいましたが、客席で感じる開幕前の熱気やさんざめきが懐かしい。
二部の「御存知鈴ヶ森」は「御存知」江戸随一の侠客・幡随院長兵衛とお尋ね者の白井権八の出逢いを描いたものです。
出逢うのは品川宿に近い鈴ヶ森、小塚原とならぶ江戸幕府の2大処刑場(お仕置き場)です。舞台正面にあるのが死刑囚を弔う題目塚(南無妙法蓮華経の文字)非人が大勢たむろしているところへ通りかかった白井権八。まだ前髪の美少年、鶸色の着付けがぴったりとあって演じる菊之助さんにうっとり。襲いかかる雲助たちを見事な刀さばきで蹴散らし、追い払ってしまいます。その立ち回りの中に巻き込まれる一丁の駕籠。乗っていたのは江戸花川戸の侠客・幡随院長兵衛。
「お若えのお待ちなせえやし」「待てとおとどめなされしは拙者が事でござるかな。」など名セリフが多いお芝居ですが、私の好きなのは江戸での世話を引き受けた長兵衛と権八の別れ際のせりふ
「ゆるりと江戸であいやしょう!」です。この時期だからでしょうか。心にしみてきます。
7月の演目が発表されたときには幡随院長兵衛は吉右衛門さんで、お元気になられた舞台を見ることができるのを楽しみにしていましたが、残念。勿論代役の錦之助さんもいいのですが、あの渋い「お若えのお待ちなせえやし」が聞きたい。早いご回復をお祈りしております。
現在の品川区南大井2丁目付近にある「鈴ヶ森刑場跡」です。元禄時代に池上本門寺の僧が建てたと云われる題目塚があります。この鈴ヶ森で処刑された第一号は慶安事件(1651)の丸橋忠弥です。
第二部もう一幕は78才の白鸚が初役で演じることが話題の「身替座禅」奥方玉の井は芝翫さんです。
七月大歌舞伎は29日が千穐楽 第3部は16日までなのでご注意ください。
第一部「あんまと泥棒」「蜘蛛の糸宿直噺」11時開演
第二部「身替座禅」「御存知鈴ヶ森」14:30開演
第三部「鳴神不動北山櫻」17:40開演
お問い合わせはチケットホン松竹 0570-000-489 (10時-17時)
2021.7.6 第2部観劇