私の青天 ~兜町の新しいスタイル~
初冬の兜町界隈を歩く機会があった。
東京証券取引所を核として数々の証券会社が立ち並ぶ、日本の金融・経済の中心を成すエリアである。
その兜町の週末が、驚くほど明るい雰囲気に包まれていた。
若いお嬢さん達が華やかな服装で、アイスクリームやホットドックを片手に、日だまりの中を歩いていた。
と言っても、観光地のそれとは違う、からりと落ち着いた休日の時間が流れていた。
陽光に照らされたビル街に、「渋沢ロード」のフラッグが翻っている。
渋沢栄一が設立に関与した、国立第一銀行の跡地や東京証券取引所の周囲を「渋沢ロード」と名付けて、活動の跡を巡る目印となっていた。
丸の内二重橋ビル(千代田区)にある東京商工会議所。
その1階に初代会頭に就任した渋沢栄一像があります。
1.5mの高さは、ほぼ等身大と言われています。
日証館のスイーツ
日証館は、兜町の鎮守、金融の守り神として知られる兜神社に隣接して建つ。
ここは、日本橋川に面して建てられた渋沢栄一の邸宅があった場所である。
1928年(昭和3年)に建設された建物は、リノベーションを重ね、現在でもオフィスビルとして利用されながら、歴史的価値を保全している。
館内の一画に、チョコレートスイーツとジェラートの専門店、ティール「teal」がオープンした。
ジェラートの「あまおう&柚子」を選んでみた。
おっ。イチゴを頬張っている感じだ。素材の甘酸っぱい果汁をたっぷりと楽しめる。
渋沢栄一が愛でた、「赤石」を連想してのチョイスだった。
渋沢栄一が日本経済の発展を祈願し、身近に置いて大切にしたという「佐渡の赤石」
日証館のエントランスに展示されていたが、日本橋兜町7番1号に開館した「KABUTO ONE」の、キューブ型大型LEDディスプレイ「The HEART」の下に移設されている。
縁起石に触れて念願成就にあやかるのも、兜町散策の面白さである。
このスパニッシュ風の建物は?
一階が石貼り、二階から上がタイル張り、屋根はスペイン瓦、飾りのある丸窓。
テーマパークにありそうな洒落た建物。
ここは兜町である。山二証券の現役オフィスなのである。
向かいにある「ホテルK5」のコーヒーショップから窓越しに眺めると、海外にワープした感覚になる。
常盤橋公園(千代田区)に立つ銅像。
外堀を挟んで、日本銀行本店本館が近くにあります。
老舗の跡地に
兜町の定番の映像というと、界隈で最も古い鰻屋さん「松よし」で、うな重をかき込む証券マン達の姿だった。
株価がうなぎ上りになるようにというゲン担ぎである。
「松よし」は、2018年の年末に、約70年の幕を閉じた。
その跡地に、アジア初のスエーデン・ビールバー、「オムニポロス トウキョウ」が営業している。
まあカラフルな店内。店舗のたたずまいから居酒屋と思って入店すると、目に飛び込んでくる刺激に、めちゃくちゃテンションが上がる。
飛鳥山公園(北区)に立つ銅像。兜町から飛鳥山に邸宅を移し、諸活動を続けました。
公園内には、洋風茶室の晩香廬や青淵文庫などの大正建築があり、内部公開もしています。
新たなスタイルを創り出した店舗
イーズ「ease」は、洗練された都会的なパティスリーだ。
兜町のイメージを変えた店舗の一つだと思う。
ケーキの価格は、兜町に掛けてランチで食べた居酒屋の「ねばとろ丼」と変わらない。
香り、素材、食感、フルーツの酸味やクリームの甘味が混じり合う愉しさ、ハーブの余韻。
明らかに大人が楽しむケーキだ。
このケーキは、どの様に食べようか。
コクが深い、奥行きのあるビールが良いかな。
まだ外は明るい。大人のケーキなら、ビールにも合ってしまう。
人に寄り添った生涯
社会福祉施設「養育院」跡(板橋区)にある渋沢栄一像。
約50年にわたり院長として事業の発展に尽力しました。
兜町に人の流れを生み出す原動力となったのは、大河ドラマ「青天を衝け」である。
2024年に刷新される一万円札の肖像は、映像と役者の熱演により、グッと身近なものとなった。
彼が歩いた道を辿り、その生涯、思想、業績に思いを馳せる。
青天を衝くという、勢いある志は貴い。
混迷する時代においても、自らが求める青天をしっかりと捉え、心痛む事象に直面しても、前に向かって踏み出す志を持ちたいものである。