2022 江戸の園芸文化「ハナショウブ」
初夏、優雅な花姿としっとりとした風情が人々を魅了するハナショウブ。浜離宮恩賜庭園では、戦後、都に下賜された後、中の御門付近を手始めに、花木園、延遼館跡に植栽され、現在約1,000株と聞くハナショウブが咲き揃い始めました。 アヤメ科の多年草で、野生のノハナショウブをもとに、交配され、幾多の品種が作出されてきた、日本の古典園芸植物のひとつで、サトイモ科のショウブと混同されがちですが、別種です。 「いずれアヤメかカキツバタ」との表現がある通り、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタは外見が似ていますが、野生状態ではアヤメは乾燥した日当たりのよい草地に、ノハナショウブは水際に、カキツバタは水湿地に生え、花弁の中心に、アヤメは網目模様が、ハナショウブは黄色のV字状の斑紋が、カキツバタは白のV字状の斑紋があることで識別できます。 ハナショウブには、菖蒲の特徴を強く残す長井古種の他、江戸系、伊勢系、肥後系に大別され、花色は、白、薄紅、紫、青、黄と豊富で、絞りや覆輪など濃淡や模様の入り方も多彩で、咲き方も、八重咲き、獅子咲きと変化に富みます。