早稲田から日本橋の地へ
早稲田界隈のことを調べていたら、恥ずかしながら「カツ丼発祥の地」が早稲田だということを初めて知りました。諸説あるようですが、少なくとも「ソースカツ丼」は大正2年(1913年)に早稲田大学近くの鶴巻町で開業した『ヨーロッパ軒』が最初。出身が『ヨーロッパ軒』の創業者と同じ福井というソースカツ丼の『奏す(注・ソース)庵』が、早稲田から日本橋の地へ今年5月末にやってきました。三越、三井本館の並びの日本橋三井タワー地下一階にあります。
カツ丼のファーストフード
『奏す庵』は「大人のファーストフード」を標榜しています。日本橋とファーストフードといえば、江戸時代の屋台のそばやすしなどを思い出します。日本橋で出店するためにファーストフードを標榜したのでしょうか?そうではなさそうです。早稲田時代から「出来立てをさっと食べられることが大事」と、作り置きはせず、注文を受けてからカツを揚げていますが、肉を薄くすることで出来立てを実現しました。
同郷先人の「オマージュ」
『ヨーロッパ軒』は神奈川県横須賀への移転を経て、大正12年(1923年)の関東大震災後、故郷の福井に戻って店舗展開し、今や地元を代表する「ソールフード」になっています。同じ福井出身で、外食産業に新しい風を起こしたいと思っていたITコンサルタントの森武彦氏が平成28年(2016年)、『ヨーロッパ軒』の創業地の早稲田鶴巻町に開業したのが『奏す庵』です。人的、資金的な関係はなく、『ヨーロッパ軒』を尊敬して似たものをつくる「オマージュ」だといいます。
日本橋起点に世界へ
『ヨーロッパ軒』の創業者はヨーロッパで修業しました。森氏はヨーロッパ修業もなく、独自の味で勝負しました。やむをえない理由で早稲田を離れて日本橋に出店しましたが、「海外のものを柔軟に取り入れて日本的に仕上げた多様性そのものこと“和文化”」といい、その伝播に日本橋を起点として国内のみならず海外展開もにらんでいます。まるで日本橋から全国へ五街道が延びたように。
油の摂取量抑えたカツ
平日のランチはカツの「ワセカツ丼」、野菜の揚げ物の「ベジカツ丼」、カツと野菜の「ベジミックス丼」の3種類。主力の「ワセカツ丼」をいただきました。最初に福井産の梅干しが出て、食欲増進の腹ごしらえをしてもらっている間に揚げた、薄いカツ3枚、少し厚めのカツ2枚の計5枚が特別のタレで味付けされ、ご飯の上に乘った上に蓋で蒸らされて卓上に。後は味噌汁と漬物など。注文してから3分ほどだ。薄い方は特製のソース、もう一方の方はカツ自体を味わう。揚げ物は水分と油を分離させ、油の摂取量を抑える揚げ方でおいしさを引き出しているそうです。料金は税込で千円。ランチの時間は午前11時ー午後5時。夕方からのディナーは定食、単品なども。年中無休。