浮世絵のれんプロジェクト~日本橋めぐりの会
こんにちは。まちあるき大好き、おでかけニャンコです。
葛飾北斎没後170回忌を記念して、<日本橋めぐりの会>が富嶽三十六景の浮世絵のれんを
製作します。そののれんを軒先に掲げることで、日本橋をますます盛り上げようという素敵なプロジェクト。
会の代表・川崎晴喜さんにお話を伺いました。
「日本橋の土になりたい」
「最期は、本当にそう思ってるんですよ。日本橋川にまいてくれと。」
「運営費は毎年200万円13年間赤字で、自分の貯金からの持ち出しです。
でも、”道楽”ってそういうものですよね。」
と、さらりとおっしゃる川崎さん。
日本橋の達人、カリスマコンシェルジュは、やはりただものではありません。
野村証券勤務時代から日本橋めぐりツアーを企画。200店舗の老舗の旦那衆と20年以上挨拶をかわし続けている会社員として話題に。
2006年に早期退職し、本格的に日本橋のスポークスマンとしての活動を始めました。
ーーーそこまでの原動力は何でしょうか。
川崎「私は、生まれて最初の25年は”勉強の時間”。次の25年は、”社会に出て一人前になる時間”。今は、”社会に恩返しをする25年”だと思っています。
それは、秋の紅葉のように輝いて活躍できる時だと思っています。だから今、毎日が楽しくてしょうがない。そして、そのバトンを次に渡してリレーしていきたい。また、そうでないと意味がないと思っています。」
ーーー今までの活動を教えてください。
川崎「最初、4年間で7000人をガイドしました。ところが、リピーターはたったの二人しかいませんでした。みんな、浅草や築地などへの観光時間のつなぎに日本橋にきていたんですね。その理由を聞いたところ ”日本橋にはお江戸がない” と言われました。
それで<シャッターチャンスプロジェクト><浮世絵のれんプロジェクト><触れ太鼓>などを企画してやってきました。
現在のガイドツアーは、すべてリピーターの方たちです。同じ場所に何度も行くけれど、その都度違う話が聞けて新しい出会いがあるからと、皆さん楽しみにしてくださっています。」
・・・現物が残っていないなら、創ってしまおう。まさに、<日本橋の仕掛人>です。
ーーーツアーでは、どんなところを大切にしていますか。
川崎「一目、一聞き、一口が大切ですね。
外国人だって、見た瞬間、食べた瞬間にわかれば言葉は通じなくていい。そのうち、AIがガイドするような時代がきます。だからこそ、リアルでサプライズ、そしてオンリーワンを追及していかないとだめですね。そうじゃないと、まず自分が飽きてしまうと思いますよ。」
・・これぞプロフェッショナル、仕事の流儀!
ちょっとお話を伺っただけで、珠玉の言葉がポンポン飛び出します。
ーーー川崎さんにとって<日本橋>は、どんな街ですか。
川崎「日本橋は、”一生修業の場” です。一流の人、一流の味と出会えます。
でも、覚悟しないと人を説得し続けることはできません。覚悟とは、腹を切るか、金を払うか(笑)毎日工夫しないと生き残れない。自分の興味を徹底的に追及して、相手をうならせないと何も変わらないですからね。」
ーーー 一流とは、たとえばどんなことでしょうか。
川崎「わかりやすく言えば、全国のプレミアのついたチケットが手に入ります。みなさん、招待チケットを持っていますからね。
でも、それを譲っていただいても、そのお礼はお金ではできません。ものを頼まれ、それでお返しをするんです。だから大変なんですよ(笑)それが、すごく面白い。」
・・・頼られるというプライスレスの信頼関係。これこそ毎日積み重ねてきた仕事の証なのですね。
写真右が川崎さん。左は、<望月茶飴本舗>社長の望月功さんです。
ーーー今回は、北斎170回忌記念プロジェクトですね。北斎はどんな人だったのでしょう。
川崎「北斎は科学者でもあります。遠眼鏡も手に入れたというところがすごいですね。クローズアップやストップモーションを開拓した絵師です。
そして、どんなに周囲に認められても、自分が納得できない人でした。一番になる、二番以下は負け犬だ、というところがあったと思いますよ。ぶきっちょで一人ぼっちな人が最後に勝つのだと思います。」
・・・・お話を伺っていると、どんどん川崎さんが北斎に重なって見えてきます。でも、川崎さんが一番好きなのは、実は歌川広重です。
川崎「広重はロードムービーですね。イージーライダーの散歩です。北斎に比べて線は下手ですが情緒があるんですよ。北斎も広重も、実際に行ってないところも見事に描いている。ドローンもない時代に俯瞰で描けるなんて、すごいですよね。」
・・・浮世絵と江戸文化のお話になると、わかりやすく、それはもう楽しそうに語ってくださいます。私の頭の中にもお江戸が見えて、ぐいぐいと妄想の世界にひきずりこまれました。
・・・このまま、江戸情緒にずっと浸っていたいところですが、残念ながらそろそろお時間。
ーーーこれからの日本橋をどう思いますか。
川崎「中央区は人口も増え、外国人もふえているから面白くなると思いますよ。今の10代は、世界を見ている若者がたくさんいるから楽しみです。
そういった変化をとらえて、どうリードしていくかが、これからの日本橋の在り方だと思います。そして、それは自分の生き方そのものになってくると思います。」
・・・老舗の伝統を守り、そしてアレンジして進化し続ける日本橋。
そこでの毎日の真剣勝負。その戦いを、心の底から楽しんでいらっしゃるのですね。
川崎「でも、自分はあと二年だと思っています。二年で貯金が底をつきますからね。旦那衆とおつきあいできないと、意味がないですからね(笑)」
・・・ううう。ここで、凡人の私は聞かずにはいられません。
ーーー奥様からの反対はありませんか?
川崎「中学で落語を聞いていて、将来はご隠居になろうと思ってたんです。そこで結婚するときに ”50歳になったら隠居になる” と宣言しておきました。
だから、50で会社をやめるときも何も言いませんでしたね(笑)今も応援してくれていますよ。」
・・・川崎さんの<日本橋愛>は、奥様の愛の賜物ということは間違いないようですね。
お忙しい中、楽しく奥深いお話を本当にありがとうございました。
*クラウドファンディングで、浮世絵のれん制作費用の協賛を募集しています。(5月31日まで)
詳細は日本橋めぐりの会のHPをご覧ください。→ コチラをクリック