みなとっこ日記 めずらしいお客様
湊一丁目にある、鉄砲洲児童公園。
ここには、大きな噴水があるんです。
ふと通りかかると、あれ?
なにか大きな鳥が目に入って、つい足をとめました。
あ! カルガモがいる!
噴水の段にのぼって、水浴びをしています。
この噴水は、いつもスズメたちの水浴び場になっています。
大騒ぎしながら、ちゅんちゅんとせわしなく飛び交って、水滴をぷるぷると飛ばしている光景を、よく目にします。
この日も、カルガモのうしろに、スズメがちゃんといましたよ。
カルガモのお客様は、はじめて。
湊のまちにカルガモが来てくれたなんて、うれしいな!
いつもなら、佃堀でよくみかけますし、亀島川にもいましたっけ。
隅田川みたいな大きな川では、水面に下りているところはあまり見ませんし、上空を飛んでいるのもめずらしいくらいです。
こぢんまりとした、のんびり、落ち着いた環境の水辺が、カルガモは好きみたいです。
「こんなところに、こんなにいい水浴び場があったのねぇ!」
「知らなかったわ、またちょくちょく来ましょうよ」
なんて、カルガモたちは話しているように見えます。
そこへ!
カラスがわがもの顔で飛んできました。
カルガモは身を低くして、警戒します。
せっかくくつろいでいたスズメも、逃げてしまいました。
カルガモ、大丈夫かなぁ…と思ってみていると、
カラスも、めずらしいお客様に遠慮したのでしょうか、
すぐにどこかへ飛んでいってしまいました。
鳩も歩いてきました。
公園の目のまえは鉄砲洲通り。
江戸バスのバス停もあります。
となりには鐵砲洲稲荷神社が御鎮座しています。
てっぽうず…聞きなれない地名ですね。
このあたりは、江戸時代初期の埋立地で、かつてより「鉄砲洲」と称されました。
いまの、鉄砲洲通りより東側、隅田川よりの一体、北は亀島川河口付近から、南は明石町、築地にいたるまでの地形が、鉄砲(火縄銃)に似ていたことに由来するものだとも、または幕府の鉄砲方が、試し射ちをした場所だからとも言われています。
隅田川河口付近のこの辺りは、江戸時代のその昔、「江戸湊」と称され、海の玄関口として栄えた水辺のまちです。
米、油、味噌、醤油、炭など、諸国からの物資が、弁才船にのって、みなここを目指したのです。
そのとき、水夫たちは築地本願寺の大屋根を目印にして位置を見極めたといいます。
鐵砲洲稲荷神社は、その頃「湊稲荷」と呼ばれ、海を望む位置にありました。ちょうど、今の亀島川の河口付近です。
今も、歩道のすみにひっそりと残る、稲荷橋の親柱は、その名残りです。
海の安全を守る神様として、全国の水夫たちから、厚い信仰をあつめました。
鉄砲洲児童公園は、初夏の緑にあふれています。
シラカシの木、シダレ桜、キンモクセイ、銀杏の並木道。
今はあじさいがきれいです。
まだいるかなぁ…そう思って、噴水のところに戻ると、
あれ…もうカルガモはいなくなっていました。
また来てね…。
空を見上げると、夏はもうすぐそこまで、来ているような気持ちになりました。
中央区観光協会特派員 湊っ子ちゃん
第183号 令和5年6月23日