2023 秋の風情漂う 主張し過ぎない存在感「吾亦紅」
浜離宮恩賜庭園 ぼたん園奥の草地に、秋の風情を感じさせるワレモコウの花が風に揺れています。 ワレモコウはバラ科ワレモコウ属の多年草。 晩夏から秋にかけ、高さ1m内外の花茎の上方で枝を分けそれぞれの枝先に、一般的なバラ科の花とは似つかない、長さ1~3cmの円筒状の穂状花序をつけます。 1つ1つの小花は2mm弱で花弁のように見えるのは萼片で4裂し、密集し花穂を形成し、赤褐色/赤黒色/濃赤色/赤紫色と様々に表現可能な複雑な色合いで、上から下へ咲き進み、有限花序と称されます。控え目な花ですが、虫媒花なので、ハナバチの仲間に花粉を運ばせる秋の野草同様、花粉媒介者が好む赤紫系統に萼を染めています。ワレモコウの葉は下部に集まり上部に殆どないため、茎と赤褐色の花だけの、派手さのない楚々とした佇まいで、円熟し落ち着いた雰囲気を醸し出し、古から、侘(び)寂(び)を重んじる茶人や俳人にも愛されてきたようです。 名前の由来に関しては、①「割木瓜」を当て、花と蕾が、御簾等の上部を飾る横長の幕 帽額(モコウ)に描かれた文様(木瓜紋)に割れ目が入ったものに似た形状由来説、② "我が国の木香" の意の「吾木香」を当て、香りが線香の原料になる木香の匂い似由来説、③「吾亦紅」を当て、花色の議論の際 "吾もまた紅なり" と自ら唱えたとの逸話由来説など、諸説あるようです。 花の見た目が坊主頭に見えることから「坊主花」、花によくトンボが止まることから「蜻蛉花」等様々な別名でも呼ばれ、多くの日本人の心を捉え、親しまれてきたことが伺えます。