今だけかもしれない道
中央区内には掘割の暗渠や痕跡がたくさん残っています。掘割とは江戸初期に火除けや舟運の為に作られた運河で、戦前まで残っていました。日本橋周辺では竜閑川・浜町川などがこれに当たり、今も現役の日本橋川や隅田川と合流してぐるりと地域一帯を囲っていました。神田八丁堀です。
こうした掘割跡は今でも独特のトロリとした雰囲気があります。現在の通りとはズレた場所にあり、狭く低く暗く静かなのに、小規模な神社仏閣や小料理屋が並び、ここを行き交う過去の人びとの足音が賑やかに聞こえてくるようです。
暗渠でも廃路でも掘割跡でも、過去の道を歩くというのはそれなりに楽しいもので、掘割跡を歩く同好会も存在します。また、刑事ドラマの撮影などで犯人が押さえつけられるシーンなどでよく使われています...
こうした道はちょっと怖いですが、昼間は普通に人がいますし、説明板もあります。
掘割を一本無事に歩き通すと公園になっていて、当時の橋が保存されていたりします。
しかし、現在このような道が猛烈なスピードでなくなっています。再開発の波で、道自体がなくなったり、明るく綺麗な整備された道へと変貌しています。
もちろん、建物の安全面や防犯の意味で仕方のないことです。平成の今、都心でこのような景色が見られること自体が奇跡的だったのですが、そう遠くないうちに無くなります。昭和も「歴史」の一つに組み込まれていく時が来たのです。
そんな訳で、気になる方は今の内に掘割跡を歩いておかれるといいかもしれません!
日本橋界隈だけでなく京橋〜築地の掘割まで全て歩いてちょうど丸一日くらいです。世界的なメガシティと暗く細い江戸の痕跡を出たり入ったりするので、いい具合に脳がクラクラします。お散歩のお供にお勧めなのは「東京時層地図」など、現在地をナビしながら江戸〜平成までの地図を随時切り替えて使うことができるアプリです。
そしてもう一つ!
区立京橋図書館で購入できるスペシャルマップ「郷土室だより」付録地図です!!
この地図は本当に素晴らしくて、江戸時代の切絵図と現代の地図をトレーシングペーパーで透かして重ねあわせることができるようになっています。似た本は一般にも流通していますが、こちらは大判で途切れる箇所がなく、また本当にぴったり合うように作られているのです。他に類を見ないものです。
図書館に行くと見本が貼ってあり、数百円で購入できます。こちらと「かちどき橋の資料館」で購入できる「橋のポケットマップ」は、中央区内で入手できるベストマップツートップだと思うので、若干強火でお勧めします。
街は生きているので、どれほど大切な場所でも時とともにどんどん失われていきます。
ですが、今だけ入れる道なのかもしれないと思うと日常が不思議になって楽しいかもしれません!