中央区の借景
「借景(しゃっけい)」とは、日本庭園や中国庭園における造園技法のひとつで、景色を借りること。つまり、外部の景色を庭園の背景として取り入れ、ダイナミックな景観を形成することです。
中央区をひとつの庭園に見立て、その借景を探ってみました。
まず思い浮かべるのは、東京タワーと東京スカイツリーでしょうか…。
東京タワー
※築地大橋から撮影(2020年8月8日)
まずは東京のシンボルのひとつ、東京タワー(正式名称は「日本電波塔」)。1958年12月23日竣工で、高さ333メートル。国の登録有形文化財です。設計は、同じく国の登録有形文化財である通天閣と同様、内藤多仲氏が手がけました。
東京タワーは登って眺めるだけでなく、遠くから眺めても楽しむことができます。特に夜は、その多彩なライトアップが見事です(写真のライトアップは、世界的な照明デザイナーの石井幹子氏がデザインした「インフィニティ・ダイヤモンドヴェール」)。
ちなみに、東京タワーを最初に破壊した怪獣はモスラ(『モスラ』の公開は1961年7月30日)です。最初に東京を襲った怪獣はゴジラ(『ゴジラ』の公開は1954年11月3日)ですが、東京タワーの着工(1957年6月29日)前でした。
東京スカイツリー
※佃から撮影(2020年8月9日)
続いて2012年2月29日竣工、高さ634メートルの東京スカイツリー。2008年7月14日に着工、3年半の期間をかけて完成されました。外観は青みがかった白色で、日本伝統の藍染で最も薄い色「藍白(あいじろ)」をベースにしたオリジナルカラー「スカイツリーホワイト」です。
ライティング・デザインは2020年2月27日にリニューアルされ、現在は「粋(隅田川の水をモチーフとした淡いブルーの光が特徴)」「雅(江戸紫がテーマカラー)」「幟(縁起の良い色とされてきた橘色が基調)」の3種類が基本となっています(写真のライティングは、今年COVID-19のために中止となった隅田川花火大会の打ち上げ花火や仕掛け花火をイメージした、期間限定の特別ライティング「花火」)。
レインボーブリッジ
※豊洲大橋から撮影(2020年8月8日)
レインボーブリッジは一般公募により決められた愛称で、正式名称は「東京港連絡橋」です。1987年着工、1993年竣工、同年8月26日に開通しました。
東京港第一航路を跨ぐため航路の幅と橋げたの高さを確保する必要がある一方、近くに羽田空港があるため主塔の高さに制限があり、様々な検討がされた結果、吊橋という形が採用されたようです。
レインボーブリッジのライトアップも、前述の石井幹子氏の作品。2020年6月2日に東京都が東京アラートを発動したことに伴い、6月11日に東京アラートが解除されるまで赤色でライトアップされていたのは記憶に新しいところです。
汐留の高層ビル群
※浜離宮恩賜庭園から撮影(2020年8月7日)
東京都内唯一の潮入りの池泉回遊式庭園である浜離宮恩賜庭園。そこに隣接する汐留の高層ビル群(13棟)は、1986年に廃止された旧・汐留駅の跡地に建てられました(1995年から再開発)。
ちなみに、写真右側の電通本社ビルはフランスの建築家ジャン・ヌーヴェルの設計です。
富士山
※聖路加ガーデンから撮影(2020年1月6日)
本ブログ記事の締めは、やはり富士山。江戸の町並みの彼方に遠望される富士山は、数多くの浮世絵で描かれました。富士山は江戸の人々にとって、いまよりもはるかに身近で大きな存在だったのでしょう。景観や気象条件が変わり、江戸の人々と同じ視線、頻度で富士山を眺めることは難しくなってしまいましたが、江戸時代にはなかった現代ならではの富士見スポット(例えば、聖路加ガーデン)があります。また、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵を見ながら、江戸の富士見と東京の富士見を比べてみるのも一興ではないでしょうか。