【銀座八丁目】 カプセルの中のストーリー
「中銀カプセルタワービル」
銀座八丁目、海岸通り沿いに建つ黒川紀章氏設計の中銀カプセルタワービル。
印象的な外観は何度も目にしたことがあるけれど、その中は一体どうなっているんだろう――。
そんな疑問に答えてくれる“カプセルタワー本”の最新版がこの秋に発売されます。
書籍の完成を楽しみにしていたところ、今月のはじめにこちらの記事が掲載されました。
“メタボリズム”建築の世界を味わう ― 「中銀カプセルタワービル」見学ツアー(2020年9月)
ビルのコンセプトであるメタボリズムや建物の構造が、しばしばしばた氏によって詳しく説明されています。
今回は、カプセル関連書籍を制作し、この見学ツアーを主催している「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」の活動についてご紹介したいと思います。
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトとは
中銀カプセルタワービルの保存と再生を目的に2014年にオーナーや住人で結成し、この歴史的建築物を後世に引き継ぐための活動をおこなっています。
プロジェクトの代表を務める前田達之さんにお話を伺いました。前田さんはカプセルの虜になってしまった人物で、ビルにある140のカプセルのうち、なんと15戸を保有しています。
保存・再生プロジェクトは、建物存続のためにカプセルのオーナーと管理組合に対して適切な修繕活動を促進し、建物を周知するための広報活動にも力を注いでいます。カプセルの内部を公開する見学ツアーのほか、2018年からはマンスリーカプセルを運営し、「カプセルで暮らす」という体験を提供することでカプセルの持つ魅力を広く伝えてきました。
中銀カプセルタワービルはその姿を一目見ようと海外からも愛好家が訪れるほど有名な建築物ですが、保存・再生プロジェクトの活動を通して新たなファンが増えたことは間違いありません。各種メディアの取材にも対応し、最近ではファッション関係やミュージックビデオの撮影に使われることも多いそうです。
カプセルの住人になれる 「マンスリーカプセル」
家具家電がそろい、ホテルの一室のように設えられたカプセルを一か月単位でレンタルしているマンスリーカプセル。このプランならマンションのオーナーにならなくてもカプセルの住人になることができます。
現在は無印良品がコーディネートした「無印カプセル」(トップ画像)と、1972年の竣工当時の内装やオーディオなどの面影を残した「オリジナルカプセル」の2タイプ7カプセルが稼働中です。
48年前にタイムスリップした気分になる「オリジナルカプセル」。レトロフューチャーという言葉がぴったりです。見学ツアーでは同じタイプのカプセルの中に入ります。コックピットや船室のような空間でした。
いずれも賃料は12万円(敷金礼金なし)で水道光熱費込み。カプセル内のシャワーは使えませんが、共有部にある住人用のシャワーブースが利用できます。
特に今年はテレワーク用のスペースとしても注目を集めることになりました。丸窓を背景にウェブ会議に参加したら、話題を独占しそうですね。ちなみにこの窓ははめ殺し(fixed window)です。
この特別仕様のカプセルはウクライナの建築家の方がデザインした「丸窓ソファカプセル」です。修理が必要とのことで、今はマンスリーカプセルの募集はしていませんが、窓から見える風景も相まってとても素敵なカプセルですね。
ところで、先ほどはカプセルの単位を、住宅なので「戸(こ)」と表しましたが、前田さんや住人の方は「カプ」と呼んでいるそうです。部屋呑みすることは「カプ呑み」。カプセルの住人ならではのお話は面白そうなのでもっと聞いてみたいです。
どなたかマンスリーでお住まいになる方がいらっしゃいましたら、ぜひとも遊びに行かせていただきたいのでご連絡をお待ちしております。
カプセルの内側に迫る『中銀カプセルスタイル 20ストーリーズ(仮)』
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトは今年11月に、“カプセルタワー本”第三弾の出版を予定しています。
タイトルは『中銀カプセルスタイル 20ストーリーズ(仮)』。これまで表に出ることがなかったさまざまなタイプの20カプセルのインテリアとライフスタイルを徹底取材し、そこから見えてくるストーリーを一冊の本にしました。
10平米という狭小空間をいかに工夫して、どのように使うか。近年はそうしたことへの関心が高まり、アートやクリエイティブに造詣の深い住人の手により、驚くほど変貌を遂げたカプセルたちが存在します。
和風に生まれ変わったカプセル。意外なことにあまり違和感がありません。もともと、オリジナルのカプセルは黒川紀章氏が茶室からインスピレーションを受けて設計したものでした。たしかに、日本の建築にも「円窓(えんそう、まるまど)」はよく使われています。このカプセルはもしかしたら本来の姿に近いのかもしれません。
もはや同じカプセルとは思えないほど、雰囲気が変わりました。サイドの壁には新しく窓が作られています。カプセル型マンションだからできる大胆なリノベーションですね。
ますますいろんなカプセルの中を覗いてみたくなりました。
発売が待ち遠しい『中銀カプセルスタイル 20ストーリーズ(仮)』は出版にあたり、先月からクラウドファンディングがスタートしました。カプセルファンの方にとっては見逃せない特典(リターン)も用意されています。
期間は9月30日まで。ご興味のある方はぜひご注目ください。
中銀カプセルタワーが今こそスゴイ!
普段は見られないカプセルの内側に迫り、20のストーリーを紹介する、出版プロジェクト
https://motion-gallery.net/projects/capsulestyle
カプセルを見学したあとはこちらもどうぞ「静岡新聞・静岡放送東京支社」
Photo by Jonathan Savoie / CC BY 3.0, from Wikimedia Commons
こちらは1967年竣工の静岡新聞・静岡放送東京支社です。黒川紀章氏も師事した“世界のタンゲ”こと丹下健三氏が手がけたメタボリズム建築のひとつで、中銀カプセルタワービルと同じ銀座八丁目にあります。
内部の見学はできませんが、ジミニー☆クリケット氏による潜入取材記事がありますのでご参照ください。
中央区のホームページでは「巨大樹木を思わせる」と表現されていましたが、実際にビルのそばまで行ってみると「この建物は本当に生きているのかもしれない」と思えるような造り(※)になっています。
さまざまな建築を鑑賞しながら、まち歩きをするのも楽しいですね。
※コアとなっている円筒の下部に水が張られており、植物が根から水分を吸収して空に向かって伸びているように見えます。
各ページへはこちらからどうぞ
Nakagin Capsule Tower
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト
中央区銀座8-16-10
https://www.nakagincapsuletower.com/
見学ツアーについて
https://www.nakagincapsuletower.com/nakagincapsuletour
マンスリーカプセルについて
https://www.nakagincapsuletower.com/monthlycapsule
『中銀カプセルスタイル 20ストーリーズ(仮)』出版について
https://motion-gallery.net/projects/capsulestyle