人形町駅から行ける、静かな佇まいの神社 ⑳
~ 両社稲荷神社 ~
『ギフト、そして自分も楽しむ』をフィバーブに取材します、rosemary sea です。
「人形町駅から行ける、静かな佇まいの神社」シリーズ、第20回の今回は、両社稲荷神社(りょうしゃいなりじんじゃ)をご紹介します。
それでは・・・
御由緒
両社稲荷神社の縁起は定かではありませんが、京都伏見稲荷大社の流れを汲み正一位の神階を授けられ、江戸時代初期より福田稲荷神社と共に当地「日本橋本町」界隈の商人、町人の「家内安全、商売繁盛」の守り神として、深い崇敬を集めている稲荷神社でございます。
平成5年、御社の老朽化が進んだため改装することとなり、これを機に両社稲荷神社奉賛会が設立され、以来、尚一層ご神徳を奉斎してまいりました。
平成25年12月、隣接するビル建替工事のため御社を一旦取り壊すこととなり、再建まで御霊は江戸総鎮守・神田神社(神田明神)にお移りいただき、その間、例大祭は神田明神にて斎行いたしました。
平成28年11月、奉賛会員はじめ広く当地崇敬者から寄進を募り、新たな御社の造営が行われました。
御宮は従前同様の束立(つかだて:そくりつ)向拝(こうはい)宮、鳥居は朱塗りの明神鳥居といたしました。
平成29年3月、遷座祭を斎行し、御霊を再び神田明神から当地にお迎えし、現在に至っております。
とてもすっきり、無駄を省いた綺麗な佇まいですが、後の画像でもおわかりのとおり、龍や鳥の彫られた社は、どこの神社よりも凝った造りを秘めていると思います。
とても魅力的な神社です。
今回も江戸古典落語、ご披露させていただきます。
第12回を数えます今回は、「両社稲荷神社」の“両”を頼りに落語を探してみました。
結果3作浮かびました。
① 三方一両損(さんぽういちりょうぞん)
② 千両みかん
③ 両泥(りょうどろ)
①はとても有名ですね。③は泥棒同士がお互いの家の空き巣に入っていた、というオチ。
今回は“両”ですので、①と②の2作をご紹介させていただきます。
それでは最初に「三方一両損」です。
<事前確認コーナー>
〇 大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)
江戸時代、20年間、南町奉行所の奉行を務めた、八代将軍徳川吉宗の頃の実在の名奉行、大岡越前守忠相(ただすけ)のことです。人情味あふれる裁きで名を馳せていました。
〇 南町奉行所
東京都指定の旧跡としましては、JR有楽町駅中央口前駅前広場に石碑が建てられています。
中央区でなく千代田区有楽町、ほんのわずか中央区銀座から千代田区内、となっています。
ちなみに大岡忠相上屋敷跡も千代田区霞が関1丁目とされています。
〇 「大金」「江戸っ子」「裁き」などの矛盾
この噺にはいろいろ矛盾が多いですが、それを十分含んで「落語」となりました、有名なエピソードストーリーです。
「三方一両損」
神田白壁町(しらかべちょう)の左官、金太郎は3両と書きつけと印形(いんぎょう:はんこのこと)の入った財布を拾う。
書きつけを見て神田堅大工町(たてだいくちょう)の大工の吉五郎(きちごろう)に届けようと、彼の長屋へやって来る。
財布を受け取れ、と差し出すと、書きつけと印形は受け取るが、金はもう自分のものでないから、と受け取らない。
受け取れ受け取らないの、江戸っ子同士の意地の張り合い、奇妙な争い、大げんか。
ついに南町奉行所、大岡越前守の裁きを受けることに。
事の仔細を聞いた越前、3両を一旦預かり自らの懐から1両を取り出して4両とします。
それを改めて両人に、正直の褒美として2両ずつ分け与えます。
吉五郎は3両落としたのに2両しか戻ってこないので1両損、金太郎は3両拾ったのに2両しか受け取れず1両損、越前は裁きのために1両損、「三方一両損」として納得させます。
場が収まりお膳が出てきます。
ごちそうに舌鼓を打つ両人に越前は、
「腹も身の内、たんとは食すなよ」
すると2人は、
「多かあ(大岡)食わねえ、たった一膳(越前)」
・・・続きまして、「千両みかん」です。
<事前確認コーナー>
〇 千両
江戸時代には、お米の安い時で、一両でお米が一石買えたそうです。
一度の食事を一合として、1年分のお米。
お米だけでは難しいですが、千両ですと一応「千年分」のお米が手に入る、ということでしょうか。
ま、そこまでは到底無理としましても、かなりの年数を食べていけるだけの価値が、千両という大金にはあった、と思われます。
「千両みかん」
日本橋の大店(おおだな)の若旦那が夏の盛りに病に伏してしまいました。
親であります大旦那、八方手を尽くしますが、病は重くなるばかり。
医者が言うには、これは気の病、思いわずらうことを叶えることで治ることもあるのだとか。
大旦那が若旦那に尋ねてみますが、答えません。
大旦那、番頭に聞き出すよう命令、番頭が必死に聞き出しますと・・・。
「みかんが食べたい」と。
冬場ならいざ知らず、夏の盛りにみかんとは。
探し出すよう厳命され、できなければ「主殺し」と脅された番頭さん、探し歩いてやっとの思いで神田の果物問屋にたどり着き、みかん発見。
ただ、1個の値段が千両、と言われてしまいます。
店へ帰り大旦那に報告、大旦那は言います、「せがれの命が助かるならば安い」と。
買ったみかんは1個に10房、若旦那は7房食べて元気を取り戻します。
残り3房、2房を自分の父母つまり大旦那夫妻へ、と。1房は番頭が食べたら良い、と、若旦那は番頭に渡します。
3房のみかんの値段は300両、300両なんて子供の頃から奉公していますが、今後も手に入ることはないと思われます。
番頭さん、みかん3房を持ったまま失踪してしまいました。
両社稲荷神社
日本橋本町4-4
東京メトロ日比谷線・都営浅草線 人形町駅 徒歩15分。
A4出口の人形町交差点方面を出て「人形町通り」を右、車の一方通行の逆方向に進む。
小伝馬町交差点(小伝馬町駅のところ)を左折、「江戸通り」を進む。
ファミリーマート 新日本橋駅前店さんを右折、約110m先の昭和化学株式会社さんの1つ先の角、木葉画廊さんの手前を左折、約30m左側にあります。