「五役早替わりの猿之助」-吉例顔見大歌舞伎
鳳凰丸の櫓が正面に上がり、積物も飾られて歌舞伎座顔見世が始まっています。コロナ禍でも例年通りの顔見世興行が行われることに少々感慨深いものが。今日は猿之助さんが五役早替わりで演じるのが話題の「蜘蛛の絲宿直噺」(くものいとおよづめばなし)、通常は「蜘蛛の絲梓弦」(くものいとあずさのゆみはり)として上演されているものをちょっと演出を変えたものです。記者会見で猿之助さんが「早替わりは裏方で人手を多く必要とするため、イベント制限が緩和される前は出来なかった。舞台上が密にならないよう、出演人数も絞らないといけないので一人で5役やるしかない」と笑いを取っていました。座席数は半分ながら満席です。
「蜘蛛の絲」は土蜘蛛の舞踊劇ですが、原因不明の病に伏せっている源頼光役の隼人さんは局達から新型の流行病。「三密」、「飛沫感染」「濃厚接触」などと今ならではの言葉が発せられる度に客席笑いの渦。あげくの果ては「早く殿にレムデシベルを」。寝所に忍び込もうとする「女の童」「小姓沢瀉」「番新八重里」「太鼓持ち」「傾城薄雲」を猿之助さんが早替わりで魅せます。どうしてこんなに早く変われるのか信じられず、変化の度に客席からも「あ!」というどよめきが。千筋の蜘蛛の糸を繰り出して幕になりますが、天井からも蜘蛛の糸が降りてきて舞台一杯白い蜘蛛の糸で埋まる華麗な幕切れで、拍手が鳴り止みませんでした。笑三郎さん、笑也さん、猿弥さんと澤瀉屋総出演です。
2部は菊五郎さんの「身替座禅」3部は「一條大蔵譚」」、4部は「義経千本桜」の四の切です。
今月から桟敷席も半分売り出しになり、番付(筋書)も発売になりました。国立劇場も先月から歌舞伎公演が再開され、こちらは2幕程度の狂言+幕間30分+舞踊で2時間半程度です。京都南座の顔見世は3部制で各部2狂言、上演期間は例年の半分となりました。チケットとれるか不安です。各劇場この状況下での感染防止対策と観客の満足という2つの命題に知恵と工夫を凝らしているのがよくわかるだけに一日も早い収束を待ち焦がれています。
吉例顔見世大歌舞伎は千穐楽26日です。
お問い合わせはチケットホン松竹 0570-000-489 (10時~17時)
2020/11/10 1部観劇