銀座奥野ビル306号室
昭和7年(1932)に竣工した「銀座アパート(現:奥野ビル)」
この306号室で、昭和60年代まで美容室を営んできた須田さん。
その後、奥野ビル最後の住民として、平成21年(2009)に百歳を迎えた直後に逝去されました。
そして、<銀座奥野ビル306号室プロジェクト>の約30名の皆さんで、この部屋を維持しつつ活動を続けて、今年10周年を迎えます。
まるでパッチワークのような壁
代表の黑多弘文さんにお話を伺いました。
ーーー今後、修復の予定はありますか?
黑多「修復はしません。ペンキや壁紙が剥がれても、積み重なったほこりも含めてそのままにしていきます。この鏡も、曇ったら曇ったままにしておく予定です」
ーーー維持していくうえで大変なことはありますか?
黑多「家賃を分担して払い、交通費をかけて交代で管理しているので、時間とお金の負担はあります。一人一人の<306号室>に対する思いで成り立っています。
黑多「奥野ビルで唯一残っている、当初の壁紙です。金や銀で着色されて高級なものだと思われます。」
黑多「内装は、一部屋一部屋、職人の手造りです。この天井のアーチなど、きれいにできているようですよ。窓ガラスも当初のもので、少しゆがんでいたり、気泡が入っているところもあります。」
黑多「おそらく美容室のお釜のコンセント。陶器でできています。」
黑多「この蛍光灯の会社(マツダ)、もうないので貴重なものだそうですよ。」
シマダ低オゾン殺菌燈。たまたまお部屋にいらした方が、とても詳しくて
「これもかなりレアなんですよ!」
と教えてくださいました。
次々とお宝が発見されて、電機にも建築にも、アートにも疎い私ですが、わくわくドキドキ興奮の連続でした。
たくさんの人に愛されて、
たくさんの人の思いで、ここにそっと存在している306号室。。。。
それは、とても美しく、いとおしいお部屋。
・・・・でも、いくら可愛いからってなでなでしてはいけませんよ。
ほこりが落ちてしまいますからね(笑)
*注 ほこりを強調していますが、明るく綺麗なお部屋ですので、くれぐれも誤解のないようお願いいたします。
まるで我が子のように、一つ一つ丁寧に紹介してくださった黑多さんの笑顔がとても素敵でした。
お忙しい中、本当にありがとうございました。
窓辺の緑は、プランターを置いているのではありません。
窓の外側に、細長い花壇が取り付けられていたのです。
さすが、お洒落な高級アパートですね。
306号室は、誰にも教えたくないけれど、みんなに知ってもらいたい隠れ家。
6日のオープンデーに、ぜひのぞいてみてください。