滅紫

「波除稲荷」と「浪除稲荷」

今年もあと5日、神社に年越しの大祓の茅の輪が見られるようになりました。場外に買物に出かけ、波除さんにもお参りにと思ったら茅の輪くぐりの凄い行列。「厄落とし」「疫病退散」を祈願したいという心理は皆同じ。

ところで、この波除稲荷神社は「波」ですが、佃の「浪除稲荷神社」は「浪」になっています。この「波」と「浪」の違いですが、漢字の意味上の差はないようです。築地の浪除稲荷は「埋め立て工事中、海中から稲荷明神の像が出現」したという故事がありますが、佃の浪除稲荷は創建年・ご由緒が不明とされています。一説には佃の漁民は摂津・大坂の出身なので「浪速」の「浪」を使ったのではと云われていますが。築地も佃も埋め立て地なので漁業・水運関係者が水難除けや大漁を祈念して祀ったのは確かでしょうが、気になりますね。

 「波除稲荷」と「浪除稲荷」
 「波除稲荷」と「浪除稲荷」

そして中央区にはもう一社、波除稲荷があります。東劇の駐車場に鎮座している「東劇波除稲荷神社」です。昭和50年(1975)に高層ビルに建替えられた時、この場所に祀られたとのこと。

こちらは「波」で築地の波除稲荷から分祀されたものとのことです。この東劇、今はシネマ歌舞伎などを上演している映画館ですが、昭和5年(1930)に開場し、戦後間もない時期までは歌舞伎などの演劇を上演していた劇場です。劇場には「楽屋稲荷」がありますのでその頃は劇場内にあったのでしょう。歌舞伎座が東京大空襲で焼亡していたので、1947年11月、戦後初の「忠臣蔵」を上演したのはこの東京劇場です。

鳥居の形も佃と東劇は明神鳥居、築地は神明鳥居です。差はわかりませんが、「白浪五人男」はやはり「浪」ですよね。