Hanes

江戸は三人官女より五人囃子派!?
ひなまつり前に知りたい雛人形豆知識


こんにちは。対面での取材はしばらく休止中のHanes(ハネス)です。
今年もひなまつりまでもう少しとなりました。
雛人形を飾り、ひなあられなどを準備し、「お祝いの準備は万端!」というご家庭も少なくないのではないかと思います。
日本全国で祝われているひなまつりですが、中央区内で雛人形と言ったら、やはり日本橋の十軒店を思い浮かべるのではないでしょうか?

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三越前駅のコンコースには、文化2年(徳川家斉の時代)における日本橋から神田・今川橋までの間の大通りの町並みを描いた絵巻『熈代勝覧』の複製が展示されており、そこには江戸時代の雛市の様子が見て取れます。
(十軒店については、2020年3月11日付の記事「絵巻と街路樹で楽しむひなまつり」をご覧ください。)

 

 江戸は三人官女より五人囃子派!?ひなまつり前に知りたい雛人形豆知識


一方、関東地方では、「人形のまち」と呼ばれる埼玉県さいたま市岩槻区が雛人形の産地として名をあげています。
先日、用事で同区を訪問することがあったので、江戸時代の雛人形について一歩踏み込んで調べてきました。

 江戸は三人官女より五人囃子派!?ひなまつり前に知りたい雛人形豆知識


訪問したのは、2020年にオープンしたばかりのさいたま市岩槻人形博物館
ここには、江戸後期より日本橋横山町小間物商を営んでいた天野家より寄贈された内裏雛(大正から昭和初期のものと推定)が展示されているのです。
その内裏雛は、現在の雛人形の様式に近いものの、袖などには江戸時代の流行りが反映されているといいます。
実際に間近で見てみたくなりますよね♪

私自身、これまでにいろいろな都市で雛人形の展示を楽しんできましたが、いつも気にするのは時代と産地のみ。
正直、寄贈者やつくり手を気にしたことはありませんでした。
しかし、今回は特派員ならではの視点で中央区に関する情報が得られないかとワクワクしながら展示を見て回ったところ、天野家の雛道具について興味深い情報を入手!

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なんと、天野家の雛道具は日本橋老舗漆器店・黒江屋で誂えたものが多く、同館に展示されているものもそうなのではないかということ。
十軒店では人形を販売していましたが、その周辺には、雛人形の生産を支えるお店もあったのですね。
館内での写真撮影は不可でしたが、所蔵されている天野家の雛人形および雛道具は、開館一周年記念 企画展「天野家の雛祭り~人形が彩る商屋の暮らし~」で閲覧可能です。

また、同館の展示パネルによると、江戸では雛人形の需要が高まり、徐々に日本橋の十軒店や尾張町をこえ、武州(武蔵国)や上州(上野国)の村々でも人形の産地が形成されるようになったということです。
江戸での雛人形の需要は、江戸近郊の村々にも支えられていたのですね。

その他、中央区関連では、東京市日本橋区生まれの雛人形の名手・野口光彦氏の功績などについて学ぶことができました。
(野口氏について:東京文化財研究所「野口光彦 日本美術年鑑所載物故者記事」(閲覧日 2022-03-01))

 江戸は三人官女より五人囃子派!?ひなまつり前に知りたい雛人形豆知識

(岩槻区内の公園では、注意書きも雛人形仕様)


毎年この時期に目にし、身近であるものの、実はまだ知らないことだらけの雛人形。
今回最も印象に残ったことは、能の謡と囃子方である五人囃子が特に江戸で好まれ、宮中に勤める女性である三人官女が特にで好まれたということです。
それぞれの都市の特徴を考慮すると、この好みについては妙に腑に落ちるのではないでしょうか。

また、本来は雛人形の飾り方に決まりはなく、江戸時代に描かれた本の挿絵などを見てみると、何組もの内裏雛が雛壇に飾られている様子が記録されているといいます。
その並べ方(特に男雛・女雛の配置)は、昭和天皇の即位式や御真影の並びなどに影響を受け、定着したものだと考えられています。
そして、「左上右下」の伝統が残っている地域では、今でも向かって右側に男雛、左側に女雛が飾られているのだとか。

いかがでしょうか?雛人形にまつわる歴史と伝統は、知れば知るほど面白いですよね♪
では、『熈代勝覧』や葛飾北斎の浮世絵において、雛人形はどのように描かれていたのでしょうか?
それを明らかにすることを今後の課題とし、引き続き雛人形に見る江戸・日本橋の文化を調べてみたいと思いました。