日本橋や三井本館をも支える「稲田石」とは?
都電の敷石には、稲田石も含まれていました。
数ある石の中から今回注目したのは、茨城県で採掘されている「稲田石(いなだいし)」。
笠間市役所のウェブサイトによると、稲田石は約6000万年前に地下深くでマグマが固まってできた花崗岩の一種。
笠間市稲田地区を中心に採掘されており、その白さから「白い貴婦人」の別名でも知られ、耐久性の高さから建材としてよく使用されています。
紅葉時の石切山脈、2017年撮影
石材としては江戸時代から重宝されており、稲田地区では明治22年より本格的な採石・加工がスタート!
東京に近く、なおかつ優良な花崗岩を豊富に供給できたことから、国会議事堂、最高裁判所、東京駅といった日本を代表する建造物をはじめ、日本橋浜町に東京別社のある茨城県・笠間稲荷神社の門前通りの石畳にも使用されています。
(茨城県の石切山脈と笠間稲荷神社については、2018年の記事「茨城の魅力再発見!IBARAKI senseが光る場所」をご覧ください。)
中央区内の建造物では、重要文化財に指定されている日本橋も稲田石でできています。
中央区のウェブサイトによると、1911年に架け替えられてから今日に至るその橋は、「橋台や橋脚などの表面に花崗岩を積み、内部にはレンガとコンクリートを充填させる」ことで、耐荷重に配慮した造りになっているそうです。
また、同じく重要文化財に指定されている三井本館にも稲田石が使用されています。
三井不動産のウェブサイト「10の断章/10 Fragments ー 4 彫刻 生き生きと建物を彩る物語。」には、三井本館の外装に使用されている花崗岩の産地が茨城県稲田であること、石の加工が中野組、柏木組、鍋島石材の3社に分割発注され、東京・佃島にあった加工場で行われたことが記されています。
現在の三井本館は関東大震災後の1929年に竣工したもので、もう少しで築100年を迎えようとしています。
しかし、稲田石は今でも白さを保ち、目立った経年劣化は見られません。
建設当時は、地震や先々を見据えた建材選びが行われていたようですね。
日本橋や三井本館など、稲田石が使用されているのは築100年以上の建造物だけではありません。
1988年に竣工した東京証券取引所本館にもたくさんの稲田石が使用されています。
建設を担当した平和不動産のウェブサイトでは、「最高級の稲田石を使用した重厚な石壁の新東京証券取引所ビルは、兜町のシンボルと呼ぶにふさわしい風格」と称されています。
周囲を高層ビルに取り囲まれながらも、石材の重厚感も手伝ってひときわ存在感を放っています。
今回は日本橋エリアより、日本橋、三井本館、東京証券取引所と稲田石が使用されている建造物3つをご紹介しましたが、区内にはこの他にも稲田石を使用した建造物があります。
中央区の建材というと、明治期に煉瓦街が整備されたことから煉瓦のイメージがあるかもしれません。
しかし、人知れず色々な石が中央区の建造物を支え、物語を生み出しています。
まち歩きの際には稲田石をはじめとする石材にも目を向けてみませんか?
【煉瓦に関する過去記事】
【遠足シリーズ第7弾】煉瓦が語る物語(2018年11月)
【遠足シリーズ第20弾】本家「銀座」にあやかった日本初の「〇〇銀座」に迫る(2019年12月)