一歩

秀吉ゆかりの「金茶道具」拝見

 個人の手に渡れば見る機会がないかもしれないと思い、先日、Shinwa Auction株式会社が銀座7丁目で開いたオークションの下見会にお邪魔し、豊臣秀吉が戦国時代の武将の藤堂高虎に贈ったとされる「金茶道具一式」を拝見させていただきました。細かい紋様に心が吸い込まれ、光り輝く美しさに圧倒されるばかりでした。

 今回のオークション出品を紹介した図録によれば、藤堂家の当主さえ年に一度しか目にすることができなかった秘蔵品で、昭和4年に国宝や皇室の御物、名家に伝来し門外不出とされる美術品などを集めて開かれた美術博覧会「日本名寶展覽会」でも最も来場者の注目を集めたとされます。第二次世界大戦中に金属類回収令を受け供出されましたが、幸運にも武器製造の資源として使用されずに日本銀行に残され、終戦後に売り戻されて再び藤堂家の所蔵になりました。数奇な運命を辿ったわけです。日銀時代に行った金の品位測定によると、おおよそ金80~88%、銀12~20%だったそうです。

茨城の美術館、3億円で落札

茨城の美術館、3億円で落札 秀吉ゆかりの「金茶道具」拝見

 オークションは千代田区内の会場で行われ、真贋の保証は「いたしません」との断りがあったものの、3億円で落札されました。オークション出品数は336点で、藤田嗣治や東山魁夷、草間彌生氏らの作品も出されましたが、断トツでした。日経新聞によれば落札者は茨城県筑西市の広沢美術館で、町おこしの一つの目玉にするそうで、再び拝見できるのはそう遠くはなさそうです。今回の取材では同社の業務部シニア・オペレーター学芸・広報担当の髙井彩氏にお世話になりました。ありがとうございました。