東京ダンボ

LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

京橋にあるLIXILギャラリーで「台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-」と題して、6月6日(木)〜8月24日(土)の会期で、世界の台所を人形の家のようなフィギアにして展示しています。

 

展示会の概要

建築家の宮崎玲子氏は50カ国以上の国を訪れ伝統的家屋における台所調査を行い、その際の資料をもとに1/10縮尺の再現模型を製作されており、今回はそのうちの6点が展示されています。

北緯40度を境にして北からはドイツ、ロシア、カナダのイヌイット、南からはインド、ネパール、日本の模型を見ることができます。

住まいに欠かせない、生きるための空間「台所」は食物を扱うためその土地の気候風土や文化と密接に関わり、また働く場として機能性を求めた変化も見られる場所です。地域によって独自性も高いとのことです。

ドイツ フランケン地方の小作人の家

ドイツ フランケン地方の小作人の家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:北の国の冬は寒くて暗いため、暖かくて明るい日の設備が家の中心に据えられる。この家の台所はドイツのフランケン地方の小作人の住まいで、20世紀初頭まで見られたもの。もともと炉があった場所に鉄製のクッキングストーブを置き、古い煙突で煙を外に出している。ストーブの熱は隣室も暖める。

ロシア カレリア地方の労働者の家

ロシア カレリア地方の労働者の家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:寒さの厳しいロシアではペーチカ(暖炉)で室内全体を暖かくする。また昔ながらの台所には流しがないこともある。労働者のための丸太組みのこの家では、トイレの手洗い器を琺瑯の流しにかけて、汲み置きの水を使う。流しの下には排水管の代わりにバケツが置かれ、一杯になると外に捨てに行く。鍋の載った台所のペーチカは、隣家と二分して使い、背面で隣室の寝室も暖まる。

北極圏 イヌイットの雪の家

北極圏 イヌイットの雪の家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:冬になるとこの地方の伝統的な住まいは、カットした雪を丸く積んで行く雪の家・イグールである。密閉性があり、アザラシの脂で焚く小さな火だけで十分暖かい。出入り口には風よけ室、寝床には排気口と氷の窓がある。外は天然の冷凍庫さながらの気温で、そこでアザラシや魚を処理する。北極圏では外が台所となる。

インド タミル地方の商人の家

インド タミル地方の商人の家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:南の国では、調理に必要な火を焚き続けると暑いため、日の制御に神経を使う。そのため、火を使う台所には神様が祀られ、神聖な場所とされており、土間でも必ず履物を脱いで裸足で入る。伝統的な台所には、土で前面と上部の開いたかまどをつくり、燃料は平たく伸ばして乾燥させた牛糞を使う。

ネパール カトマンズ地方の農家

ネパール カトマンズ地方の農家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:日干しれんが積みの4階建ての建物で、1階は家畜舎、2階の穀物庫には主食とされるトウモロコシが見える。最上階の台所には、土でかまどが築かれ、毎日の食料や水、燃料は、狭い階段を使って運び上げる。ヒンズー教徒にとって台所は神聖な場所で、家族以外の人は立ち入ることができない。

日本 武蔵野の農家

日本 武蔵野の農家 LIXIL ギャラリー 台所見聞録–人と暮らしの万華鏡–

解説:日本では、本州中部以北を中心に、いろりに鍋を吊って調理する習慣が広がり、一方、南の地域では、かまどが調理に使われた。この家は、1980年代まで東京郊外に残っていた農家で、いろりにかまどが併設されている。関東では、土間を「台所」と呼び、調理場を「勝手」「勝手元」などと呼んだ。

 

 

フィギアの他にも宮崎氏が訪問した家屋の台所のイラストや、西洋の影響を受けた日本の近代台所の変遷を表した各種文献、その近代日本の台所を体感できる日本住宅公団用のステンレス深絞り流し台が展示されたりしています。

東京ダンボも料理には興味があり台所は家の中でも大好きな空間の一つです。今回の展示会は、その台所が人間の日々の営みを守る大事な機能を持ち、各地の気候や歴史、信仰等の影響からその構成に大きく影響受けていることを感じることができる素晴らしいものだと思いました。

まだまだ会期が残っていますので、皆さんも是非行かれることをお勧めします。

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