Hanes

日本橋にあった地本問屋の出版物をご自宅で!
初夏にぴったり、喜多川歌麿筆「物干し」


こんにちは。しばらくアクティブな活動はお休み中のHanes(ハネス)です。
世界的に外出自粛が続いている中、休館中の博物館や美術館では、家に居ながらにして所蔵作品の一部が楽しめるプロジェクトを行ってきました。
SNSで「#MuseumFromHome」、「#自宅でミュージアム」、「#おうちミュージアム」などで検索すると、博物館や美術館のすばらしい作品を見ることができ、今後の旅行の計画を立てるのが楽しくなります。

勿論中央区に関する絵画の中には、海外に所蔵されているものもあります。
おそらく最も有名なのが、ベルリン国立アジア美術館所蔵の「熈代勝覧」
複製は三越前駅の地下コンコース壁面で見ることができます。(※写真は3月1日に撮影)
Vortrefflicher Anblick unseres prosperierenden Zeitalters (Kidai Shōran)

 日本橋にあった地本問屋の出版物をご自宅で!初夏にぴったり、喜多川歌麿筆「物干し」


私自身もSTAY HOME週間中に色々な博物館・美術館の作品をオンラインで楽しんだわけですが、ある日喜多川歌麿による興味深い錦絵を海外のライブラリーで発見!
偶然中央区と関係のある作品だったので、今回はその作品および関連史跡について取り上げます。

喜多川歌麿「物干し」

今回見つけたのは、東京国立博物館に所蔵されている喜多川歌麿「物干し」(大判 錦絵 3枚続)。
恥ずかしながら、アートに疎い私は今回初めてこの作品を知りました。
普段なら博物館でしかじっくり鑑賞できない作品が、今はアイルランドにあるチェスター・ビーティ―・ライブラリーのGoogle Arts & Cultureでオンライン展示されています。
(このライブラリーは、鉱山業で成功したアメリカ人アルフレッド・チェスター・ビーティ―卿のコレクションを所蔵した施設。現在ダブリン城の敷地内にあるものは、2000年に彼の生誕125周年を記念して開館したものです。日本に関する所蔵作品が比較的多いのも特徴。)

オリジナルの設定は英語ですが、一応Google翻訳で日本語にも対応しています。
夏日が増えてきたこの季節にちょうど良い季節感のある作品です。
ぜひこちらから鑑賞してみてください→'Drying Clothes' by Kitagawa Utamaro

さて、オンライン鑑賞をされた方はもうお気づきかと思いますが、実はこの作品、日本橋横山町にあった岩戸屋喜三郎が版元なのです!
この版元については不明な点もあるのですが、作品中にも見られるように◯に岩の字の商標を使用していたことは分かっています。
また、化政期(1804年〜1830年)には歌川国貞歌川広重が描いた浮世絵を多く出版したものの、天保期(1830〜1844)には廃業した可能性が伝えられています。
(参考:たばこと塩の博物館「版元の世界~江戸の出版仕掛人 part 2~」

江戸時代の出版文化を支えた版元や地本問屋は、中央区内では日本橋に多く集まっていました。
今回は現在も跡地が示されている地本問屋の一つにフォーカスします。

日本橋に残る地本問屋跡を訪ねて

今日、案内板つきで示されている地本問屋が、日本橋大伝馬町の蔦屋重三郎「耕書堂」跡です。
蔦屋重三郎は、有名な絵師の作品をたくさん出版する江戸一流の版元でした。
その絵師たちというのが、葛飾北斎喜多川歌麿東洲斎写楽など。
その他、太田南畝山東京伝といった戯作者の作品も出版していました。

 日本橋にあった地本問屋の出版物をご自宅で!初夏にぴったり、喜多川歌麿筆「物干し」


寛政の改革時には出版統制による弾圧を受け、財産を半分没収されるという処分を受けましたが、それ以降も活動を継続し、江戸に娯楽をもたらしました。
そんな彼は今年生誕270年
詳細は、3月に先輩特派員滅紫さんがお書きになった記事「写楽・歌麿の仕掛人「蔦重」生誕270年」をご覧ください。

絵を鑑賞する際は、どうしても作品の大きさや数、技巧に圧倒されがちです。
細部に見られる季節感や版元の商標などは、とりわけ解説がない限り目が行き届いていませんでした。
そんなこともあり、解説ごとに自然に視点を移せる工夫が凝らされたこのオンライン展示は本当に画期的で、こんな私でも浮世絵の奥深さや面白さに気づくことができました。

自由に外出できるようになったら浮世絵に関するお店や史跡を巡るべく、まち歩きの計画を立ててみようと思います♪