下町トム

秋のお彼岸は心穏やかに

毎年、春秋のお彼岸になると、多くの方が先祖のお墓参りに出かけたり、寺院に詣でたりします。日本では平安時代に貴族の間で始まった風習だそうです。仏教行事が一般化したものですが、そもそも発祥の地のインドはもとより、中国や朝鮮半島など、他の仏教に関わる国では見られない日本独特の行事です。江戸時代後半になって一般庶民の間でも、お彼岸を日常行事の中に採り入れるようになったそうです。

なぜ、日本でそのような習慣が根付いたのかについては諸説がありますが、ぼくとしては、日本の風土のなかで自然と定着したのではないかと推察します。つまり、昼と夜の長さが揃い、太陽が真東から登り降りするという特別な日に、自然に畏怖と感謝の気持ちを持ったのではないでしょうか。同時に四季の彩りが豊かなこの国では、「暑さ寒さも彼岸まで」の諺に象徴されるように、季節感を感じる頃合いでもあったように思います。

 秋のお彼岸は心穏やかに

中央区のランドスケープの一つ、〔築地本願寺〕でも「秋の彼岸会」が催され、多くの方が参詣に訪れています。秋の筋雲が流れ、ほど良い風が吹いて、季節がすっかり移ろいだのを実感することができます。

境内には小さな花が咲いていました。塔頭の影もだんだん長くなっていきます。これからは夕暮れも少しずつ早くなるでしょう。世の中が一刻も早く落ち着いて平穏が蘇ることを祈る一日になりました。