浜離宮朝日ホールwithコロナ(シェイクスピア~哀しみの女たち~)
『京橋の瀧山町の 新聞社 灯ともる頃のいそがしさかな』という、銀座にある啄木の歌碑が有名なせいで、朝日新聞東京本社といえば銀座とか京橋のイメージがある人もいるかもしれませんが(いないか・・)、当時の社屋は関東大震災で焼失し、有楽町時代(現在は有楽町マリオン)を経て、1980年以降は築地にあります。
その朝日新聞東京本社内にあるのが浜離宮朝日ホールです。
先日そのホールで、久しぶりに観劇する機会がありましたので、ちょっとレポートしてみます。
※上記の画像は、浜離宮朝日ホール公式facebookページのもので、ポスターの一部と合成しています。
とても音響の良いホール
劇はずっとピアノ伴奏付きで進行していたのですが、その音響の良さに驚かされました。
浜離宮朝日ホールはシューボックス(靴箱)型のホールなのですが、そもそもシューボックス型というのは音響が良いようです。
ニューイヤーコンサートで毎年おなじみのウイーン学友協会ホールもシューボックス型ですね。
あとで公式サイトを見たところ、1996年の米国音響学会が調査した世界22か国76ホールの中で、浜離宮朝日ホールはニューヨークのカーネギーホールなどと並んで「Excellent」とされた6ホールの中のひとつだったようです。
(ちなみに学友協会ホールはその一つ上、最上級の「Superior」の3ホールのようでしたが)
というわけで、ここで「観劇」できることはあまり無いようで、カレンダーを見てもクラシックの演奏会やリサイタルがたくさん掲載されています。
※ステージの前のほうで白く光って見えるのは、三脚に載せられたシェイクスピアの肖像画です。
シェイクスピア~哀しみの女たち~
もちろん、「哀しみの女たち」というシェイクスピアの作品があるわけでありません。今回の演劇(シェイクスピアなのでいちおう演劇と書きますが)はちょっと変わった趣向です。
「オセロ」のデズデモーナ、「マクベス」のマクベス夫人、「ハムレット」のオフィーリアという、悲劇の女性3人の哀しみの叫びの部分だけを切り取って、オムニバス形式みたいな感じでまとめたものになっています。
ピアニストの江澤隆行さんが、それぞれに関連する曲をピアノで演奏しながら、女優の田野聖子さんとソプラノ歌手の田村麻子さんが、それぞれモノローグとオペラアリアで女性たちの叫びを表現するというものでした。
狂気を演じるというのは、それだけでも難しいような気がするのですが、しかもそれを「ひとりで」演ずるというのは、ものすごく難度の高いことだったんじゃないかという気もします。
そしてwithコロナ
今ではどんな劇場や映画館でも当たり前の光景ですが、マスク着用必須で入館時のアルコール消毒や検温が行われ、座席も一人おきの配置になっています。また、万一の場合に備え、チケットの半券(主催者に渡すほう)には連絡先を記入するなど様々な配慮がありました。
客席には、観客同士の間隔をあけるために、シェイクスピアのポスターが1席おきに張られていました。「座らないで」とか「着席禁止」という野暮な表示ではなく、シェイクスピアがじろりと睨んでるようなポスターを張ることで、誰だって自然に「こんなところに座りたくない」と思えるという、お洒落な演出でした。
少し寂しかったのは、舞台が終わった後、ロビーでの出演者との交流が今回は中止になったこと。熱演にお礼を込めて声をかけたいと思ってる人はたくさんいたはずですが、やむを得ないですね。
今回は幕間に15分の休憩があったのですが、ロビーでの会話はお控えくださいとのアナウンスもありました。観劇の楽しみのひとつは、知り合いと感想を語りあうという、将棋の感想戦みたいなところもあるのですが、それは劇場を出てから存分に、ということのようでした。
ただ、一番寂しかったのは主催者と出演者のほうだったかもしれません。コロナ禍で観客の数が少ないだろうという想定からか、なんと今回の公演は「10月7日の1日限り」だったのです。大赤字なんだろうなということは計算しなくてもわかります。
結果論で言うと、1人おきの配置とはいえ今回の公演はキャンセル待ちが出るほどの「満席」だったので、もしかしたらもっと長い期間でも良かったのかもしれないですね。。
とにかく、早くコロナが収束して演劇界が活気を取り戻すことを祈るばかりです。
浜離宮朝日ホール
住所:〒104-8011 東京都中央区築地5-3-2 朝日新聞東京本社・新館2階
都営大江戸線築地市場駅A2出口を出ると、写真のような朝日新聞東京本社ビルの入り口が見えます。そのまま中に入ってエスカレータで上がって行くことになります。
公式サイトはこちらから。
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/