銀座を飛び出た「カプセル」
さいたま市の北浦和駅近くに、北浦和公園という公園があります。この公園はかつて埼玉大学があった敷地に整備されたもので、園内には埼玉県立近代美術館が立地しています。
美術館があるためか、公園内にも野外アート作品が数多く設置されています。
その中の「彫刻広場」というゾーンの一角に、丸い窓のついた白い直方体を見つけました。
この形、どこかで見たことがあるような気がします…
白い直方体の正体は?
そう、その正体は銀座8丁目にある「中銀カプセルタワービル」の「カプセル」の部分です。
中銀カプセルタワーがどういう建物かは、私が昨年書かせていただいた記事をご覧ください。
さて、上記の記事中でも触れているように、取り換え可能なように設計されたカプセル(=住戸)は結局一度も外されたことがないのですが、なぜさいたま市の北浦和公園にカプセルがあるのでしょうか?
都県境を越えたモデルルーム
その秘密を解く鍵は、2011〜2012年に森美術館(港区)で開催された「メタボリズムの未来都市展 ― 戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」にありました。
元々、中銀カプセルタワービルの1階にはモデルルームとしてカプセルが1つ展示されていたそうですが、
中銀カプセルタワービルにとって重要なキーワード「メタボリズム」に焦点をあてた同展覧会において、このモデルカプセルが運び出され、展示されました(そういえば私も見に行った記憶が微かにあります)。
この展覧会が終了したあと、カプセルの行き先として選ばれたのが北浦和公園だったようです。
公園内に設置されたカプセルは、中に入ることはできないものの、外から窓越しに中を覗いて、カプセルの様々な装置を見ることができます。
丸い窓の向こう側には東京の街並みではなく公園のみどりが見えており、カプセルがワープしてきた!という感じがして面白いですね。
カプセルタワーのゆくえは…
北浦和公園の近くにお立ち寄りの際は、ぜひ公園内のカプセルも訪れていただければと思います。
…ところで、本家のカプセルタワーについて、先日、気になる報道を見かけました。
カプセルタワーの敷地売却が決議され、住民の退去が進んでいるというものです。
具体的にどれくらいのスケジュールで退去や売却が進むかは外の人間には分かりませんが、銀座8丁目のあの場所にカプセルが積み上がった姿を見ることができる日も、残りそう長くないかもしれません…。
個人的には、もし解体されてしまったとしても、北浦和公園のように色んなところでカプセルが渡っていったら面白いなと思うところです。ぜひ、中央区内にも!
さらに、ニュースがもうひとつ…
以前記事にさせていただいた「旧・電通本社ビル」は中銀カプセルタワーと同じ「メタボリズム」の思想が現れている建築物ですが、こちらの建物もこの4月から解体工事が始まってしまいました…。
江戸・東京の中心の一角を担う中央区の風景は、日々ものすごいスピードで変わっていくのを感じます。
新しいまちづくりに期待しつつ、失われていく風景を見つめ、アーカイブしていくような記事も書いていければと思います!