滅紫

「一世一代の」知盛と29年ぶりの「鼠小僧」ー二月大歌舞伎

二月歌舞伎座の話題は仁左衛門さんが「一世一代」で演じる「義経千本桜」より「渡海屋」「大物浦」の知盛です。史実の知盛は壇ノ浦の合戦で入水して世を去りますが、その知盛が実は生き延びて義経に復讐を企てるが果たせず、壮絶な最期を遂げるという一幕。

仁左衛門さんは平成16年に歌舞伎座で初演以来この大役を何度となく演じてきました。今回「一世一代」で演じることになったのはインタビュー記事によると「知盛は今回でやりおさめないと次に出来たとしてもみっともないものになる可能性があります。そこではっきりと自分で終止符を打つことにしました」

満員の客席です。渡海屋銀平の姿で花道に登場したところから大拍手。白装束の平知盛の幽霊に変わり、血に染まり矢の刺さった姿で花道から再登場。碇を担いで海へ身を投げる最期まで息をつく暇もありません。拍手が鳴り止みません。演じ納めに立ち会えた幸せをしみじみ感じます。

もう一つの話題は29年ぶりに上演される「鼠小僧次郎吉」。黙阿弥の「白浪物」狂言のひとつで、「義賊」としての善意の施しが裏目に出て・・という展開。平成五年の国立劇場以来29年ぶりの上演。鼠小僧を演じる菊之助さんと息子の丑之助さんが蜆売り三吉を演じ、親子で演じるのは発表によると大正14年以来、97年ぶりとのことです。その時は六代目菊五郎と七代目梅幸でした。代々音羽屋さんゆかりの演目です。8才になった丑之助さんが長いセリフをよどみなく、名演技。初お目見えで祖父に当たる人間国宝2人に抱かれ嫌がっていたのを思い出して感無量です。どうして29年間も上演が途絶えていたのか不思議なくらい面白い。

コロナ禍で初日から代役だった芝翫さんが復帰しています。

二月歌舞伎座は25日千穐楽。

一部 11:00開演 「御浜御殿綱豊卿」「石橋」

二部 14:30開演「春調娘七種」「義経千本桜・渡海屋・大物浦」

三部 18:15開演「鬼次拍子舞」「鼠小僧次郎吉」

チケットのお問い合わせはチケットホン松竹 0570-000-489 10時-17時

          2部 2022/2/7,3部 2022/2/10 観劇