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祝・島崎藤村生誕150年!
中央区内での足跡を辿って


こんにちは。アクティブ特派員のHanes(ハネス)です。
先日旅先にて、2022年が島崎藤村生誕150年だと知る機会がありました。
本ブログでも、島崎藤村に関する記事をいくつか執筆してきたこともあり、今回は彼のこれまでの功績を称え、改めて中央区内の島崎藤村ゆかりの地を訪問しました。

まずは、「島崎藤村 北村透谷 幼き日ここに学ぶ」と刻まれた記念碑のある泰明小学校へ。
訪れたのは7時半。登校する小学生たちの声が辺りに響き、出勤前に元気づけられました。

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


記念碑のそばには中央区教育委員会が設置した案内板があり、近代ロマン主義文学の開拓者・北村透谷(1868年~1894年)と自然主義文学の代表的作家・島崎藤村(1872年~1943年)について詳しく知ることができます。
両者ともに、1878年に創立された第一大学区第一中学区第十七番小学泰明学校(現・泰明小学校)で学びました。

現・岐阜県中津川市生まれの藤村は、9歳で上京。
京橋区槍屋町(やりやちょう)にあった姉の嫁ぎ先(現・銀座4丁目付近)および同郷人の家から通学していました。

次に、明石町にある明治学院発祥の地へ向かいました。

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


この発祥の地と藤村は直接関係があるわけではありませんが、1887年、彼は15歳で明治学院普通学部本科に入学しています。
実はこの年こそ、東京府から私立明治学院の設置が認可され、白金にキャンパスが開かれた年。
つまり、彼は明治学院の第一期生にあたるのです!

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


碑の裏側には、かつて築地居留地にあった東京一致神学校(明治学院大学の前身)について刻まれています。

続いて訪れたのは、隅田川沿いに残る海水館跡
多くの文化人が集ったこの割烹旅館兼下宿に止宿した藤村は、自伝小説『春』を執筆し、朝日新聞に連載しました。

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


案内板の右側にある記念碑は、1968年に藤村の母校である明治学院大学の藤村研究部によって建てられたもので、裏には『春』の執筆由来が刻まれています。
隅田川沿いを散策した際は、この碑の裏側もどうぞお見逃しなく♪

そして最後の訪問スポットは、1924年に創設され、新劇運動の拠点となった築地小劇場跡
実は、藤村が故郷の馬籠を舞台に執筆した長編小説『夜明け前』をもとにした演劇が1934年に初演された場所でもあるのです!

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


泰明小学校にある北村透谷・島崎藤村記念碑、明治学院発祥の地、海水館跡、築地小劇場跡と4スポットご紹介してきましたがいかがでしたか?
学生時代、作家時代と異なる時代の藤村と中央区の関係が垣間見られたのではないかと思います。
文豪と呼ばれる方々の作品は難しそうな印象を受け、私自身図書館を訪れてもあまり手に取ることがありません。
しかし、島崎藤村生誕150年という記念すべき年だからこそ、秋の夜長を利用して彼が海水館で執筆した『春』や築地小劇場で初演された『夜明け前』を読んでみようと思っています。

余談

築地小劇場跡の記念碑に刻まれた劇場の正面玄関の屋根下に、葡萄の房が確認できます。
これまでは見過ごしてしまっていたのですが、食欲の秋ということもあり目に留まりました。
なぜここに葡萄の房が刻まれているのでしょうか?
いくつか文献に目を通してみると、以下のことが分かりました。

『日本演劇全史』
「葡萄の房のマークは、三番叟の鈴との類似、ギリシャの酒の神バッカス及びギリシャ劇との因縁

中野正昭「グランドホテルの演芸場-帝国ホテル演芸場とその時代」,『大正演劇研究』,8
葡萄は演劇と酒の神ディオニュソスの象徴である。(...)ちょうど同じ頃に旗揚げした築地小劇場のマークもまた葡萄だった。劇場を古代ギリシアのような一種の祝祭空間へ戻したいという意識の現れだろうか」

 祝・島崎藤村生誕150年!中央区内での足跡を辿って


どうやらギリシャの演劇と酒の神ディオニュソス(ローマ神話では「バッカス」)やギリシャ劇に関係があるということが分かりました。
いついかなる理由で日本の演劇がギリシャから影響を受けたのか、それは今後の調査課題としたいと思います。

葡萄と新劇についてはRIEdelさんの記事「葡萄に見る“新劇”の巨人の足跡~『自由劇場』『築地小劇場』そして再び『自由劇場』へ~ 」で詳しく紹介されています。
ぜひ合わせてご覧ください。

島崎藤村関連記事

ご紹介スポット情報

北村透谷・島崎藤村記念碑
住所:東京都中央区銀座5-1-13

明治学院大学発祥の地
住所:東京都中央区明石町7-16

海水館跡
住所:東京都中央区佃3-13-19先

築地小劇場跡
住所:東京都中央区築地2-11-17

参考文献・論文・ウェブサイト

【参考文献・論文】
河竹繁俊 『日本演劇全史』 岩波書店,1959年.
中野正昭「グランドホテルの演芸場-帝国ホテル演芸場とその時代」,『大正演劇研究』,8,2000年,pp. 104-123.
山本澄子「昭和初期の新劇とアメリカの表現主義戯曲の移入」,『立正大学人文科学研究所年報 別冊』,1987年,pp. 49-69.

【参考ウェブサイト】
新国立劇場「夜明け前」https://www.nntt.jac.go.jp/season/s11/s11.html(2022年10月28日閲覧)
明治学院大学「時を超えて心にこだまする 島崎藤村の熱きメッセージ。」https://www.meijigakuin.ac.jp/about/why/shimazaki/(2022年10月28日閲覧)
早稲田大学演劇博物館「夜明け前 第1部」https://www.nntt.jac.go.jp/season/s11/s11.html(2022年10月28日閲覧)