再開発のウラには「高さ」との戦いがある

どうも、です。

皆さんご存知のこととは思いますが、日本橋周辺ではここ数十年のスパンで複数の再開発計画が着々と進行しています。中でも「東京駅前常盤橋プロジェクト」の集大成である「トーチタワー(Torch Tower)」計画では、高さ390m日本一の高さのタワーが2027年度に竣工予定です。

ところで、この超高層ビルをこの場所に建設することができたのは、ある法律の制限区域外であることが理由となっています。逆にいうと、3月10日にグランドオープンした「東京ミッドタウン八重洲」は高さ240mですが、トーチタワーのように高さ300mを超えるビルを八重洲に建てることはできませんでした。

直線距離で700mほどしか離れていない「東京ミッドタウン八重洲」と「Torch Tower」。この2箇所の建設に関わる違いを紹介しようと思います。

カギは羽田空港からの距離

カギは羽田空港からの距離 再開発のウラには「高さ」との戦いがある

空港の制限表面をプロットした首都圏地図(地理院地図より)

飛行機の運行などについて定めた法律「航空法」の中で、飛行機が安全に離着陸できるように滑走路周辺の建物の高さに制限を設けています。

空港からの距離や角度によって制限の内容は変わりますが、特に東京駅近辺で影響があるのものが以下の制限表面です。

円錐表面(航空法第56条第3項)
空港の標点から半径4,000m〜16,500mで囲まれたエリアに適用

羽田空港から東京ミッドタウン八重洲までの直線距離は約13,700m、トーチタワー建設予定地までは約14,400mなので、距離だけで見るとどちらも円錐表面にかかってしまいます。

ただ実際のところ、東京都心の上空を低空で旅客機が飛行することがないことから、滑走路へ進入する方向から角度的に遠い箇所は規制緩和がされて、円錐表面が適用される距離が短くなっています。

上図の左側の緑の大きい円が羽田空港の高さ制限の範囲ですが、海側は全面が制限区域にかかっていますが、陸側は部分的に制限緩和がされているエリアがあります。羽田空港北側の緑色の無い箇所が、丁度東京駅や常盤橋辺りです。

絶対に超えられない「高さ」がここにはある

絶対に超えられない「高さ」がここにはある 再開発のウラには「高さ」との戦いがある

▲八重洲・日本橋付近の制限表面(地理院地図を利用して作図)

八重洲・日本橋周辺の制限表面を拡大してみてみると、東京駅北端より南側が制限区域、北側が制限区域外であることがわかります。

距離から概算すると、丁度境界にあたる赤線付近での高さ制限は約260m。そこから空港に50m近づく毎に建物の制限高が1m低くなります。厳密には標高も加味されるので、制限ラインの南側である八重洲近辺は約250mよりも低い建物しか建設できないというわけです。

そのため、制限区域内の「東京ミッドタウン八重洲」はもちろん、2030年供用開始予定の「日本橋一丁目東地区」の再開発でも、制限ギリギリの高さを攻めているのが伺えます。

日本橋一丁目中地区」では制限区域のちょうど境目ということで、ギリギリセーフで超高層ビルの建設が許可されたのだろうと思われます。

同じ中央区内、それも近いエリアで同時期に再開発が進む「八重洲」と「日本橋」ですが、できあがるビルの高さが少し違うだけでも街の様子は大きく変わりそうな予感がして、ますます完成が楽しみです。

参考文献