いのちゃん

【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

ライトアップした永代橋
Photo by た! / CC BY-SA 3.0, from Wikimedia Commons


まち歩きに出かけたくなる暖かな季節の到来です。
今回は番外編として、都内に残る永代橋にまつわる歴史資料をご紹介します。

「帝都東京の門」永代橋

隅田川に架かる永代橋中央区新川と、江東区佐賀、永代とを結んでいます。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

隅田川に架かる「永代橋」を東京都中央区より撮影。
Photo by jmho / Public domain, from Wikimedia Commons

元禄11年(1698)の架橋から、昭和15年(1940)に勝鬨橋が登場するまで、240年以上の長きにわたって隅田川の第一橋梁でした。

その勝鬨橋も今は平成30年(2018)に完成した築地大橋に第一橋梁の座を譲っています。


勝鬨橋
については以前に橋脚の内部を見学したときの記事がありますのでアーカイブをご参照ください。

アーカイブはこちら 【勝どき・築地】 勝鬨橋の仕組みがわかる「かちどき 橋の資料館」(2017年12月)

勝鬨橋橋脚内見学ツアーは2023年より再開されました。ご興味のある方は公益財団法人東京都道路整備保全公社のホームページをご覧ください。

数々の創作の舞台となった永代橋

永代橋は江戸随一の長さを誇り、橋の上からの眺めも素晴らしく、浮世絵にも幾度となく描かれました。

古典落語の演目として永代橋の名前を知っているという方も多いかもしれません。落語では滑稽話に仕立てていますが、永代橋は江戸時代に歴史に残る大変な出来事の舞台となりました。それが「文化四年永代橋崩落事故」です。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶


文化4年(1807)8月19日、「深川の八幡様」と親しまれる富岡八幡宮の祭礼が行われました。祭りのために集まった民衆が一斉に永代橋を渡ったとき、木造だった橋はその重さに耐えきれず崩れ落ち、そこへ人波が押し寄せ、さらに多くの人が次々に転落する事態となりました。その下は海へとつながる大川です。行方不明となり、身元の確認もままならなかったことでしょう。こうしたことを、落語では悲惨さをそぎ落とし、笑いへと転化して現代まで語り継いできました。

今も続く富岡八幡宮例大祭のにぎわいについては、人出の多さがよくわかるこちらの記事をご参照ください。

8月13日 永代橋に53基の神輿が勢揃い by ふーちゃん氏(2023年7月)

今は隅田川から離れた場所に

この事故の犠牲となった人びとの慰霊のため、深川寺町(現江東区)にあった海福寺供養塔石碑が建てられました。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

黄檗宗 永寿山海福寺


海福寺は明治43年(1910)に深川から現在の目黒区下目黒に移転し、供養塔石碑もこの場所に移されています。

目黒区のホームページには「空前の大惨事を江戸市民がどのように受け止めたかを知ることができる、都内唯一の資料」とあります。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶


供養塔は見上げるほどの大きさで、事故があったその年の百日忌に建立されました。犠牲となった人びとの戒名と町名が刻まれており、方々からたくさんの人が祭礼に集まっていたことがうかがえます。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

供養塔の下部側面です。「百ヶ日」の文字が見えます。

供養塔の前に建つ石碑は安政3年(1856)の五十回忌の追善供養碑です。その後も深川地区の木場の人びとによって、明治15年(1882)に七十七回忌、明治30年(1897)に九十一回忌の追善供養がなされたことが記してありました。

 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

石碑には「永代橋沈溺横死諸亡霊塚」、事故のあった日付と「木場」の文字が刻まれています。

永代橋崩落事故のことは知っていましたが、実際に史料を見たことはありませんでした。海福寺でこの供養塔石碑を目にして、200年前の江戸市民の心中にふれた思いがしました。


海福寺
のある目黒区下目黒もまた数々の浮世絵に描かれた江戸有数の名所であり、かつては江戸市中から一日かけて行楽に出かけるリゾート地のような存在だったそうです。現代ならばさして時間はかかりません。中央区ファンの方もどうぞ遠足にお出かけください。

スポットデータ

スポットデータ 【番外編】 江戸市民の心に刻まれた永代橋の記憶

永寿山海福寺

東京都目黒区下目黒3-20-9


※海福寺では現在、改修工事を行っています。お参りの際は足元にお気をつけください。

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永代橋は平成19年(2007)に国の重要文化財に指定されました。この特派員ブログにもたくさんの記事があり、つい先日も興味深い記事が掲載されたばかりです。キーワード検索もできますので、ぜひあわせてご覧になってください。