「華ひらく」に込められた想い 〜やなせたかしと三越包装紙〜

こんにちは!中央区観光協会特派員のsnowflakeです。
いま、NHKの朝の連続テレビ小説で注目を集めている、アンパンマンの生みの親・やなせたかしさん。
実はその若き日々に、意外なキャリアがあったことをご存じでしょうか。
戦後間もないころ、やなせさんは中央区・日本橋にある三越本店で宣伝部に勤めていました。
百貨店の華やかな舞台裏で、彼はデザイナーとしての第一歩を踏み出していたのです。
日本初の百貨店オリジナル包装紙
1950年、三越は日本で初めてとなる百貨店オリジナルの包装紙「華ひらく」を発表しました。
デザインを手がけたのは、画家・猪熊弦一郎氏。
鮮やかなスキャパレリ・レッドの花びらが舞うような抽象的なモチーフ。
その華やかなデザインには、「人々の心に花が咲くように」との願いが込められていたといいます。
「華ひらく」は、戦後の再出発を象徴するアートとして、希望と美の象徴となり、現在も変わらぬ姿で使われ続けています。
若きやなせ氏が手がけた「mitsukoshi」の文字

この「華ひらく」には、もうひとつの物語があります。
当時、三越の宣伝部に勤務していたやなせさんは、包装紙の原画を受け取るため、猪熊氏のアトリエを訪れました。
その際に「“mitsukoshi”の文字は君が描くのだよ」と声をかけられ、実際にロゴデザインを手がけることになったのです。
やなせさんが描いた「mitsukoshi」の文字は、どこかあたたかみのある優しいタッチ。
その筆致には、後にアンパンマンを生み出す彼の人柄と感性が、すでに表れていたように感じられます。
この街が生んだ、アートとやさしさ
三越本店がある日本橋は、古くから文化と商業が交差する中央区の象徴的な街。
この街が持つ豊かな感性と創造の土壌が、「華ひらく」というアートを育んだのでしょう。
70年以上たった今も、「華ひらく」は変わらぬ美しさをたたえ、買い物客の手元をやさしく彩っています。
お買い物の際には、ぜひ包装紙のデザインの奥に広がる物語にも思いを巡らせてみてくださいね。