ほんとうに、成り立つんですか。お能。
「近代日本経済の父」と呼ばれた、渋沢栄一氏。
その功績をたたえた銅像が、都内にも幾つか建てられています。
千代田区大手町2丁目の常盤橋公園内に、実業家渋沢翁の颯爽たる姿を現した一体があります。
この銅像の制作者は、「東洋のロダン」とも称された彫刻家、朝倉文夫です。
実はこの銅像、二代目なのです。
初代の像は昭和8年(1933年)に完成しましたが、第二次世界大戦時に金属提供で撤去されてしまいます。
戦後、昭和30年(1955年)に、再び朝倉文夫により作成されました。
その台座に浮き彫りにされている文字が「青淵澁澤榮一」
「青淵(せいえん)」とは、渋沢栄一の雅号です。
従兄であり学問の師であった尾高淳忠(おだかじゅんちゅう)が、生家の裏に水が湧き上がる池があったことに因み命名したといいます。
顕彰能「青淵」
渋沢栄一を主人公にした新作能、「青淵」が上演されることを公演のフライヤーで知りました。
9月29日、観世能楽堂、GINZA SIX 地下3階です。
ちょっと、ちょっと待ってください。
渋沢栄一は、天保11年(1840年)に生まれ、昭和6年(1931年)まで活躍された方です。
歌舞伎をはじめとする芸能が、古典だけでなく、現代や未来、果てはアニメ作品をもその舞台に取り入れているのは知っています。
でも、さすがに、能には馴染みにくいのではないでしょうか。
※ 観世能楽堂のエントランス 鏡板に老松が描かれています。
能舞台は、およそ6m四方の本舞台とそこから下手・左側に伸びる橋掛り。この限られた空間に物語をどう組み込んでいくのでしょう。
能の音楽を担当する、笛、小鼓、大鼓、太鼓の囃子方は、どう活かしていくのでしょう。
謡(うたい)は、地謡は、なくてはなりません。どう揃えていくのですか。
※ 品川区の喜多能楽堂でのワークショップで拝見した面(おもて)
何よりも、能は能面をつけて演舞する仮面劇と認識していましたから、面をどう用いていくのでしょう。
実在した近い年代の人物だけに、能として作り込むのに様々な難しさがあるのだろうと想像します。
しかしながら、実際に観ることで、気がかりの一つひとつは次々に解消されていくのでしょうけれど。
制作者が困難に対峙して、どのように「能」に落とし込んだのか、答え合わせをしていくのも楽しみです。
青天を衝け
渋沢栄一を大人も子供も知っている人物に押し上げた、二つの出来事があります。
ひとつはNHKの大河ドラマになったことです。
渋沢栄一を主人公にした「青天を衝け」は、2021年に放送されました。
演じたのは吉沢亮。
今話題の映画、「国宝」の主人公ですね。
新一万円札
※ 日本銀行本店本館の見学時に撮影
もう一つが、2024年7月3日から使用が開始された新一万円札。
皆さんも、きっと栄一さんが好きでしょう。
財布の口を大きく開けて、お待ちしています。
王子飛鳥山
北区王子飛鳥山は、渋沢栄一が晩年を過ごした場所です。
飛鳥山周辺には、渋沢栄一関連の施設がたくさんあります。
「渋沢資料館」では、91年間の人生をたどりながら、幅広い活動を知ることができます。
広い窓からは、飛鳥山の移り行く風景をゆっくり楽しむことができます。
書庫として、また接待の場として使われた「青淵文庫」
家紋の柏の葉をデザインしたステンドグラスや壁面のタイルが鮮やかな洋館は、国の重要文化財に指定されています。
木造瓦葺き平屋建ての洋風茶室の「晩香盧」
賓客のもてなしに使用したこの建物も国の重要文化財です。
薪能「青淵」
10月30日には、飛鳥山公園内の野外舞台で、薪能「青淵」が演じられます。
能の中では、小舞「飛鳥山」や「王子の狐火」が舞われ、ご当地の香りが醸し出されます。
屋内の能楽堂と野外の薪能を観比べてみるのも、一段と趣がわくことと思います。
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