日本橋青空化計画:前回オリンピック時は空を飛ばす「空中作戦」。今回は水に潜らせる「水中作戦」
「日本の中心、お江戸日本橋の上を無粋な高速道路が走るなんて、もう許しません」と今年2021年、江戸橋から日本橋を越えて神田橋ジャンクションまでの約1.1キロの高速道路地下化計画が動き始めました。
1964東京オリンピックの開催が決まっていた日本。当時の道路事情は極端に悪く、江戸橋付近では平均時速15~25キロのノロノロ走行。高速道路が絶対必要、でも開催まで5年だけなので用地買収に時間をかけられない。そこで川の上に道路を通すという「空中道路」の採用が決まりした。それから57年。空中から水中へ移動です。
東京の道路は江戸時代以降、すべて日本橋で合流するように作られています。そのため、旧来の道路の上に作るにしても日本橋付近で一つに合流させなければなりません。ましてや、巾が50mほどしかない日本橋川の上を利用するとなると、ルートは曲がりくねってしまいます。下の写真左端は江戸橋近くにある、日本橋ダイヤビル(三菱倉庫本社)。すぐ横を大きく曲がった高速道路が抜けていきます。カーブが付けられた長さ30mの部材を一分の狂いなく作り、一つ一つ繋ぎ合わせる技、東京タワーで培われた高度な技術が生かされました。
三菱倉庫で働いていた人、いきなり、窓の外を目線の高さで車がビュンビュン走ったので驚いたでしょうね。「見た?今のドライバー、ロレックスの時計してたよ」なんてね。
三菱倉庫を通り過ぎると、道路はさらにカーブして日本橋に突入していきます。「まずい。このままでは橋の照明塔にぶつかってしまう」。道路をパッと開いて、柱を避けました。
世界を驚かせた複雑な上下3層構造と立体ラーメン構造。
日本橋のすぐ東側の江戸橋ジャンクションは日本初の上下3層構造。ここに3本の道路を通すには支える橋脚が100本必要です。でも、100本も打ち込むと川の水が流れなくなって、道路にあふれてしまう。そこで少ない橋脚で複数の道路を支える「立体ラーメン構造」が採用されました。これも日本初。
「出来るわけない」、「無謀」と言われていた首都高速道路はオリンピックの開会式9日前に完成し、視察に訪れた世界の技術者達を驚かせたそうです。「大都市の上を走る複雑な曲線道路。われわれでは、とても作れない」(アメリカ連邦道路局長レックス・ウィットン)※引用 プロジェクト挑戦者たち 首都高速、東京五輪への空中作戦
「これは芸術だ!」箱崎ジャンクションは鉄工建造物・橋梁おたくの聖地。
日本橋箱崎町にあるロイヤルパークホテル付近にある交番から上を見上げると、箱崎ジャンクションに向かう7本の高速道路レーンが交差して、その雰囲気は近未来的。地下化される江戸橋ジャンクションの重厚な鉄の構造物が曲がったり、重なったりする様にも圧倒されます。写真を撮りに多くの人が国内外から訪れます。
高速道路がライトアップする美しい日本橋を眺めながら乾杯!
「道路が目障りだなんて誰が言ったのでしょう」。一度、日本橋1丁目1番地1にある「ニホンバシ イチノ イチノ イチ」という名前のカフェレストラン風の居酒屋に行ってみてください。高速道路が照らす日本橋が輝いて「道路と橋のコラボレーション」の美しさを感じていただけるはずです。
5時から7時までがハッピーアワーでビールやハイボールが500円。残念ながら水辺に面したテラス席はハッピーアワーなしでアンハッピーかと思いきや、ビールが690円ととてもリーズナブル。テーブルチャージもありません。それで国指定重要文化財を眺められるのですからハッピーです。
首都高さん、ご苦労様。乾杯!
※2021年緊急事態宣言中は休業