江戸時代に倣う冬至の習慣~柚子湯の起源と銭湯文化~
こんにちは。アクティブ特派員のHanes(ハネス)です。
12月21日は夜が最も長い日、冬至です。
この日はカボチャを食べたり、「ん」のつくものを食べて運気を上げたり、柚子湯に入って温まったりしますよね。
中央区内にある銭湯でも、例年冬至には柚子湯が実施されています。
昔から「柚子湯に入ると風邪を引かない」とされ、その柚子湯の習慣は銭湯ができた江戸時代に遡ると言われています。
さらに、「冬至」を「湯治」、「柚子」を「融通」にかけたという話も聞きます。
今回は、寒い冬を健康に乗り切るために柚子湯に焦点を当て、江戸の習慣や銭湯文化を紐解いてみたいと思います。
神保五弥『浮世風呂ー江戸の銭湯』(朝日新聞社、1977年)の「銭湯の四季」には、「柚子湯と煤湯」について以下の通り記述がありました。
「(...)冬至の日が紋日である。陰きわまって陽始まる一陽来復の日で、家々では粥・カボチャを煮て食べる。銭湯でも柚子を輪切りにして入れた柚子湯を焚いた。風邪を防ぐ目的で入浴したのである。」
「五月の菖蒲湯、夏の土用中の桃湯、冬至の柚子湯などは薬湯の一種」
「古くから五木湯とか五木八葉湯とか言って、薬効があると信ぜられる。樹木の葉や湯草などを入れて沸かした湯があったのであるが、江戸時代に入ると、銭湯以外に営業用の薬湯が現れるようになった。薬湯では、浴槽の中に絶対に手拭いや糠袋を持ち込ませなかった。毎日湯を入れ替えなかったからだ。」
(りんご湯は聞いたことがありますが、桃湯(葉)は初耳でした!)
さらにこの薬湯について、今野信雄『江戸の風呂』(新潮社、1989年)の「薬湯と再生風呂」では、「薬湯とは病人相手の湯屋のことで、風呂に五木八草を入れて沸かす」と書かれています。
気になる五木八草は以下の通り。
五木:梅(槐(えんじゅ))、桃、柳、桑、杉(梶)
八草:菖蒲、よもぎ、おおばこ、はす、おなもみ、にんどう、しまつづら、はこべ
江戸時代には、葉や木皮を乾燥させて湯の中に入れると長寿息災の効能があると言われていました。
特に枸杞(くこ)は不老長寿の霊験ありと言われ、枸杞湯が人気を博したそう。
将軍家は江戸牛込、麻布、麹町、小石川に薬園を設け、各大名もそれを見習って造園。
しかし将軍家御用の薬木薬草となると容易に手に入らないため、比較的入手しやすい柚子、無花果、柳、うど、よもぎ、おおばこ、大根の葉、そば粉、松葉、杉葉、米糠等で代用されたのです。
このことについて今野は、「まじないなどと言うなかれ。杉の葉の湯などは脚気に特効があると言われ、湯槽や湯桶に杉が使用されたのはこのためだ」と記しています。
(個人的には無花果湯(葉)が気になります。)
今回参照した文献から柚子湯の明確な起源の情報は得られませんでしたが、古くから(江戸時代以前からと推測)の言い伝えと思われる五木八草の中に、柚子と並んで薬湯の一種とされる菖蒲と桃は入っていましたが、柚子は入っていませんでした。
さらに、江戸時代には将軍家御用の薬木薬草の代わりに比較的手に入りやすい柚子を湯の中に入れたとのことから、柚子湯の歴史はやはり江戸時代に遡ると言えるのではないかと思います。
江戸時代の銭湯について詳しく知りたいという方は、先輩特派員yazさんの「江戸時代最初の銭湯はどこに?なぜバスタブを「湯船」と呼ぶの?」を、中央区の銭湯の魅力については、中央区まちかど展示館 連載記事「中央区 銭湯の世界へ」をご覧ください。
柚子湯の習慣が薄れつつある現代。
今年は先人の知恵に学び、おうちで柚子湯を楽しんでみませんか?
目を閉じれば、そこは江戸時代の銭湯...かもしれません!