名工 國治 花鋏展
~ 日本橋木屋本店 izutuki ~
『ギフト、そして自分も楽しむ』をパーフェクトに取材します、rosemary sea です。
老舗刃物店の日本橋木屋本店さん、併設されたギャラリー ” izutuki “ にて3月4日(木)から4月7日(水)まで、「名工 國治 花鋏展(めいこう くにはる はなばさみてん)」を開催中です。
今回も株式会社木屋 日本橋本店 安部店長にお世話になりました。
併せて、izutuki ご担当の森越さんにもご案内いただきました。
『』内は森越さんのコメントです。
それでは國治さんと東京打刃物、国治刃物工芸製作所さんのご紹介から・・・
二代目 國治
川澄 巌(かわすみ いわお)
東京都伝統工芸士
東京マイスター
秋の褒章「黄綬褒章」受賞
1932年(昭和7年)、足立区に生まれる。
東京打刃物・有限会社国治刃物工芸製作所で65年以上、鋏を作り続ける。
父である初代國治(昭和49年、勲六等瑞宝章受章)のもとで、華道・盆栽・園芸鋏づくりの技術を培い、「國治」の名を継ぐ。
華道の鋏は国内でも最高ランクと名高い名品で、完成された鋏の姿には他の職人の追随を許さない美しさがあります。
木屋さんとの取引は、初代國治のころから続き、二代目國治がまだ鋏をつくり始める前の学生時代に木屋さんへ鋏を納めに行ったこともある、と言います。
木屋さんの歴史と深くつながっている鋏職人さんです。
『主にこの方、花切り鋏を作っていまして、華道では先生が使う道具をそのまま生徒も使うので、流派によって形を若干変えているらしいです。』
『1年ほど前からこの企画を計画させていただきましたが、その間に「黄綬褒章」を受賞されました。』
『今回の展示では販売できるものが少なく、6、7割は非売品となっております。』
東京打刃物(とうきょううちはもの)
明治時代、廃刀令が公布されて以降、鍛冶職人たちは日本刀の総火造りという技法を用いて、暮らしの中で使われている刃物を造るようになりました。
そのひとつが「裁ち鋏」です。
江戸打刃物の職人がノミや鉋(かんな)を造るのに対し、東京打刃物は鋏づくりが主流となり、今日でも製造が行われています。
国治刃物工芸製作所
生け花用の鋏で全国の華道家に愛される、創業100年の歴史を誇る老舗です。
医療用の剪刀(せんとう)や鉗子(かんし)を造り、のちに生け花用の鋏で「国治刃物」の基礎を築いた先代の父を継承。
華道家に愛され、盆栽や植木などの世界でも使われる鋏を生産しています。
その製品は、プロの世界で「切る音が違う」「刃先が指先になる」と称賛されています。
・・・お待たせしました、お品のご紹介です。
お値段は全て税込価格です。
金メッキ 池坊
(画像は冒頭の1枚です)
非売品
二代目國治作、金メッキの池坊です。
金のフォルムが秀逸ですね。
右: 池坊 (桐箱)
31,460円
左: バネ式 大久保 (桐箱)
42,350円
池坊 (桐箱)
ケース・桐箱付きの黒染池坊です。
國治鋏のカシメの心棒は片側が丸く、もう片方が角ばったものを使用しています。
少し高めに付けて、出っ張った部分は叩いて入れています。
その際、自然に美しい槌目(つちめ)が生まれます。
『お値段が安く思えてくるくらい、かなりの労力がかかっていると思います。』
バネ式大久保 (桐箱)
大久保鋏は本来、庭の植木や盆栽の手入れからガーデニングまで、幅広く使われています昔ながらの伝統的な鋏。
このお品は、持ち手の先がバネの役割を果たす形の古流です。
自然な跳ね返りで鋏仕事がはかどります。
専用桐箱付きです。
『「大久保」と言いますのは、盆栽でも使っている方もいますが、古流にとても似ているんです。
先の部分が少し細くなっていますので、先を使うような、入り組んだところをスパッと切りたいときとか、植木鋏と花鋏の間みたいな感じです。』
池の坊 黒染
右: 170mm 28,600円
左: 180mm 30,800円
良い鋼材を厳選している黒染仕上げの池坊。
刃の部分だけはメッキを取っていますので、メッキ違い(クロームや黒染など)で切れ味は変わりません。
また、今回の展示は黒染が多かったですが、ねじの脇まで磨いた「半磨き」も展示されています。
古流
右: 140mm 44,000円
中: 150mm 36,300円
左: 170mm 37,400円
こちらも良い鋼材を厳選していますクロームメッキ仕上げの古流です。
曲げられた持ち手の先と本体にわずかな隙間があり、長時間使っても手が疲れません。
そして道具としての見た目の美しさも備えた重厚な佇まいと、洗練された形です。
伝統的な技法に新しい技術を取り入れ、手に馴染みやすく、切れる、音色の良い鋏となっております。
古流 錆(さび)だし
非売品
鉄をあえて錆びさせて、その錆びを落とすことによって出る鉄肌の美しさをごらんください。
色に違いがあり、ざらつき感があるのがわかりますか?、と、申し上げても微妙ですね。画像ではよくわからないと思います。
ぜひ木屋さんへいらっしゃって、実際にご覧になってみてください。
『この方の全般的な見どころは、握りやすいように全部丸く仕上げていることです。
(持ち手の)最後のところも若干隙間を空けてありまして、衝撃を逃がすように、作業をしていても疲れないように工夫されています。
刃の合わせも手作業でされています。』
『使い手に沿った作りをしていますので、ねじのところも長さを残してから削って叩いてつけています。』
大久保
190mm 33,000円
黒染仕上げの大久保(植木鋏)。
刃が尖った作りで、細い枝を切るのに向いています。
職人・國治は、仕上げの調整に亜鉛の金槌でたたいて仕上げます。
亜鉛は軟らかい金属なので、永く使うと粘土のようにつぶれていきます。
卓上鋏
非売品
「輪拵え(わごしらえ)」、いわゆる「持ち手」の形状に違和感がありますよね。
持ち手が左右に浮いていまして、机の上でもつかみやすい形の鋏です。
盆栽や紙にも使えます。
すぐに使いたい場面を想定して制作されています。
『職人さん的にはイチオシのものらしいです。
叩いて次第に曲げていくのですけど、丸くしたり隙間を空けたりとかの作業は相当時間のかかるものと思われます。
國治さんは現在88歳なのですが、足立区で現役でやられてて、ただ跡継ぎがもういらっしゃらないそうです。』
この画像ではその持ち手がわかりにくいと思いましたので・・・
角度を変えて写してみました。
このように持ち手が浮いています。
細工用鋏
180mm 非売品
細かい作業ができるように、細長くつくられた鋏です。
『先が小さくなっていまして、細かい作業に向いているような形です。
取っ手が長いので、けっこう奥のところで切りやすいと思います。』
乙女鋏 着鋼(つけはがね)
190mm 非売品
地金(じがね)に刃金(はがね)を付けてつくる、着鋼の乙女鋏です。
・・・池坊や古流の華道流派の他、草月流鋏(非売品)の展示もございます。
『草月って、ほとんど池坊みたいな形を使っていますのでわかりにくいのです。
ただ、池坊は持ち手の下の部分の「あけび巻き」を丸くしていますが、草月は流派の使い方で平たくして花の茎を叩けるようにしているようです。』
また、盆栽セット(こちらも非売品)などの展示も、鋏という文化を知る上で大変貴重な資料です。
ぜひ木屋さんへいらっしゃって、「鋏」のすばらしさを実感してみてください。
日本橋 木屋
日本橋室町2-1-1 COREDO室町1 1階
東京メトロ半蔵門線・銀座線 三越前駅 A6出口すぐ
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営業時間 11:00~19:00
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