キタムラリョウ

赤い石に魅せられた人たち

人形町にある、もうすぐ創業100年になる江戸前寿司の㐂寿司(人形町2-7)、そのカウンターの中央辺りに光沢を放つ赤い石が置かれています。佐渡の赤石です。店主に聞くと「新潟出身の職人の親父さんが贈ってくださった」なのだそう。石の美しさを引き立てるように磨き上げられ、とても大切にされているのが分かります。

佐渡の赤石に魅せられた細田榮太郎

佐渡の赤石に魅せられた細田榮太郎 赤い石に魅せられた人たち

朱(赤)は魔を払うといわれることから、佐渡赤石は縁起の良い石とされ、玄関や床の間に飾られます。今では、ほとんど産出されない貴重な石としてヤフオクなどで活発に売買されています。380万円の売値が付いている大きな石もありました。

榮太楼本舗(日本橋1丁目)前に展示されている石が佐渡の赤石です。これは初代榮太郎、細田栄太郎が金座(小判の鋳造所)を預かる後藤正三郎の別荘に招かれた時、そこにあった佐渡の赤石に魅せられたあまり、別荘ごと買い取ってしまったというものです。屋外展示なので、撮影時はくすんで見えましたが磨けば素晴らしい光を放つはずです。

※正しい榮太楼本舗の楼の漢字は上の画像を参照ください。

佐渡の赤石に魅せられた渋沢栄一

佐渡の赤石に魅せられた渋沢栄一 赤い石に魅せられた人たち

渋沢栄一も魅せられた一人でした。彼の居宅があった場所に建てられた日証館(兜町1丁目)のロビーに赤石が飾ってあります。この石は縁起石として自宅に置かれていたもので、その後、渋沢栄一の転居先に移され、彼の没後に伊藤博文と桂太郎の会談に使われた柳橋亀清楼に寄贈されたものが巡り巡って戻ってきたものです。

日本経済の牽引者になるには運も必要だったでしょう。彼の縁起石が発するパワーと運をもらいたいですね(日証館のロビーは誰でも入れます)。

赤石ゆかりの岩崎弥太郎

赤石ゆかりの岩崎弥太郎 赤い石に魅せられた人たち

明治24年、三菱の創始者、岩崎弥太郎が荒廃していた大名屋敷を購入して、社員の慰安や貴賓客のための「深川親睦園」として開園したものが発展して清澄公園(江東区清澄3丁目)になりました。公園に日本の名石が配されていることから、名石の庭と呼ばれ、中でも一番貴重とされるのが佐賀の赤石です。

会社の発展にはとりわけ強力なリーダーシップが必要とする岩崎弥太郎に対し、多くの人の資本と知恵を結集するのが近代経営とする渋沢栄一。時に対立した二人ですが、佐渡の赤石で結ばれていたのかも知れません。

ヤフオクで高値がつくことがある赤玉石です。榮太郎本舗や日証館に置かれている由緒正しい石に値段を付けるとしたら、すごいものになるでしょう。ちなみに江東区清澄公園のホームページに「中でも一番貴重とされるのが佐渡の赤石です。その価値は家が1,2軒建つといわれたほどでした」と書かれています。

持っていかれる心配ないですかね。