【遠足シリーズ第42弾】歌川広重や葛飾北斎も利用!
かつて江戸橋南袂西寄にあった河岸地とは
こんにちは。アクティブ特派員のHanes(ハネス)です。
突然ですが、皆様に問題です!
江戸時代の江戸橋付近には、とある地名を冠した河岸がありました。さて何河岸でしょうか?
選択肢:①銚子 ②木更津 ③品川 ④相模
答え:②木更津
中央区立京橋図書館発行の「郷土室だより」第159号で詳しく紹介されている通り、かつて江戸橋際の河岸地に江戸(日本橋本船町)-木更津間の水上交通に大いに貢献した木更津河岸がありました。
「郷土室だより」と千葉県発行の「木更津港のあゆみ」によると、1614年の大坂冬の陣で出陣した木更津村の水主(かこ)24人中12人が戦死し、生き残った12人は兵糧米の廻漕を務め、遺族の救済を幕府に嘆願したそうです。
その結果、徳川家康より彼らに木更津村付近の城米2万石あまりの運漕権と旅客郵送のため本船町河岸の使用権が与えられました。
しかし、後に本船町との間に訴訟が起き、木更津河岸は対岸の江戸橋南袂西寄に移転したそうです。
明治時代には官有の河岸地となり「四日市河岸」に改名され、昭和10年代前半に廃止されました。
現在はというと、日本橋一丁目中地区再開発エリアのそばに該当し、周辺では2040年に向けた首都高速道路日本橋地区地下化事業のため、2021年5月に呉服橋・江戸橋出入口が廃止されています。
江戸ー木更津間の水路は陸路に比べて半分の距離ということで、当時は多くの人が水路を利用したそうです。
また、多くの米俵を積んだ「木更津船(通称:五大力船)」は有名で、歌川広重「不二三十六景」の「上総木更津海上」に描かれ、正岡子規の俳句にも詠まれました。
歌川広重の他、葛飾北斎や小林一茶も木更津船を利用して木更津を訪れたため、江戸の流行や風俗が流入し、木更津の発展につながったそうです。
木更津市観光案内所外観より
今では江戸橋付近で木更津河岸を確認することは難しく、当時の地図や作品にその名前が残るくらいとなりました。
しかし、木更津市を訪れたら何か発見があるかもしれないと思い、しばらく前に同市へと足を運びました。
まずは木更津港へ向かい、その周辺を散策してみました。
現在の木更津港の様子
すると、住宅地の中に佇む鳥居、祠、碑が目に入りました。
よく見てみると「木更津 北かしの跡」と刻まれているではありませんか!
昭和50年に建てられたこの碑には、木更津漁業協同組合とその役員名をはじめ、漁船およびその船長と思われる方々の名前も確認できました。
北河岸は木更津にあった河岸のひとつだそうで、今から約400年にこの辺りから江戸に向かって出発した人たちがいたのですね。
さらに明治時代には、東京・霊岸島越前畑-木更津・南片町地先間に定期航路が結ばれ、旧式蒸気船が運行されたそうです。
実際に木更津市を訪れることで思いがけない発見があり、かつて日本橋にあった他の河岸地についても俄然興味がわいてきました。
引き続き、江戸時代からヒト・モノ・情報等の集積地であった日本橋に注目したいと思います!
余談になりますが、日本橋小網町・蛎殻町の間に流れていた箱崎川沿いにはかつて「行徳河岸」がありました。
小荷物や旅客の運送で使用された水路ですが、特に成田山新勝寺の参詣で多くの人に利用されたそうです。
参考ウェブサイト
国立国会図書館「レファレンス協同データベース」,子規の俳句「深川や 木更津船の 年籠」https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000232463(2022年9月13日閲覧)
国立国会図書館デジタルコレクション『木更津河岸旧記』https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2532660(2022年9月13日閲覧)
千葉県「木更津港のあゆみ」https://www.pref.chiba.lg.jp/kouwan/toukeidata/nenpou/kisarazuport-ayumi.html(2022年9月13日閲覧)
千葉県「船で房総と江戸を結ぶ」https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/seisaku/shou-chuu/furusato/documents/p16.pdf(2022年9月13日閲覧)
千葉県県土整備部港湾課「PORT of KISARAZU~未来へつながる港~」https://www.pref.chiba.lg.jp/kouwan/news/documents/PORTofKISARAZU2021_P1-12.pdf(2022年9月13日閲覧)
中央区立京橋図書館「郷土室だより」第159号https://www.library.city.chuo.tokyo.jp/images/upload/kyodo_159.pdf(2022年9月13日閲覧)
山梨県立博物館かいじあむ「博物館資料の中の『富士山』」http://www.museum.pref.yamanashi.jp/4th_fujisan/02funi/4th_fujisan_02funi_09.htm(2022年9月13日閲覧)