キタムラリョウ

銀座の老舗バーに女性が集う
--文壇、画壇、映画演劇界に愛されたバー・ルパン

銀座には二つの顔がある。デパート、老舗店、ブランドショップなどの昼の顔。そして陽が落ちると見せはじめる「酒場・バー」そして「夜の社交場・クラブ」の顔。「夜の社交場」はさておいて、老舗のバー・ルパンを訪れました。

里見淳、泉鏡花、菊池寛らの支援で昭和3年(1928年)モダンボーイ、モダンガールが銀座を闊歩していた時代にルパンはオープンしました。永井荷風、川端康成、林芙美子、さらに東郷青児、岡本太郎といった画家・アーティストや演劇界の重鎮、小山内薫、宇野重吉も常連だったそうです。

店の扉を開けて階段を下っていくと太宰治の写真と昭和24年のルパン達人会の寄せ書きが目に入ります。

 

創業当時を偲ばせるインテリア

創業当時を偲ばせるインテリア 銀座の老舗バーに女性が集う
--文壇、画壇、映画演劇界に愛されたバー・ルパン

銀座には出版社が多くあり、作家達に馴染みのある街でした。ルパンには当時少なかった電話があって、連絡を取りやすかったこともあり文士達が集まったそうです。「店が通りから見える半地下にあったので、探しやすかったからかもしれません」(開幾夫バーテンダー)。

カウンター、彫刻パネルや美しい細工の木製ボックスシートなどは創業当時のもの。ヤチダモのカウンターに座れば、そこは昭和の時代。ここで構想を練った作家や芸術家たちがいたと思うと、同じ空間に身を置くだけでもうれしくなります。最後にルパンを訪れた人達を列記してありますので敬愛する人と時間を超えたひと時をお過ごしください。

居合わせたお客さまは全員女性

居合わせたお客さまは全員女性 銀座の老舗バーに女性が集う
--文壇、画壇、映画演劇界に愛されたバー・ルパン

1945年の空襲下、ルパンの向いのビルに落ちた爆弾の爆風で入り口のドアが吹き飛びました。右のドアはその時、近所からもらってきたもの。今はインテリアになっています。このドア・インテリアの横あたりが太宰治のお気に入り場所だったそうです。

カウンターの奥に飾ってあるのが太宰治、織田作之助、坂口安吾の写真。その横の席が人気で、この席をお目当てに来る方もいらっしゃるとのこと。今日もすでに先客の方がお座りでした(写真掲載の了承をいただきました)。

文壇ゆかりのバーと聞くと渋い感じの男性をイメージしがちですが、早い時間帯だったせいか他のお客さんも全員女性でした。「今は雰囲気に惹かれた女性客が多いです。良心的な料金だから入りやすいようです」(開バーテンダー)。女性だけでルパンでお酒を傾ける・・・菊池寛が見たら何というでしょう。

私がいただいたのはチャーリーチャップリンと名付けられたアプリコットブランデーとスロージンのカクテル。テーブルチャージと併せて2300円でした。

オープンしてから今年で94年。バー・ルパンはこれからも続きます。

中央区銀座5-5-11 塚本不動産ビル地階 03-3571-0750 日曜月曜休み。火から土曜日の祝日は営業。午後5時から11時30分まで

 銀座の老舗バーに女性が集う
--文壇、画壇、映画演劇界に愛されたバー・ルパン

※店内は禁煙です。

※ルパンを訪れた人達 - 昔噺「銀座・ルパン」」より抜粋。

里見淳、泉鏡花、菊池寛、久米正雄、永井荷風、直木三十五、武田麟太郎、川端康成、大佛次郎、林芙美子、織田作之助、坂口安吾、太宰治、サトウサンペイ、小松作京、岩田専太郎、星新一、後藤明生、藤島武二、藤田嗣修、有島生馬、安井曽太郎、東郷青児、岡本太郎、小津安二郎、古川緑波、小山内薫、宇野重吉、滝沢修、木村伊兵衛、濱谷浩、秋山正太郎、緒方友三郎