Hanes

ワインと自転車の関係が面白い!
~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


こんにちは。Hanes(ハネス)です。
夏の足音が聞こえる季節になると、どこかへ旅行に行きたくなりませんか?
次の旅行の計画を立てるべく、中央区内にあるアンテナショップで各地のパンフレットをいただき、行き先を検討するのが最近の楽しみになっています。
このブログの読者の方の中には、日本橋、銀座、築地を含む東京へのご旅行をご計画中の方もいらっしゃるかもしれませんね♪

さて、最近よく利用するアンテナショップですが、4月の記事「江戸から令和に通じる「中央区」の魅力再発見!~アンテナショップのすすめ&文学・自転車・ワイン好き必見イベントのご案内~」では、江戸時代にはオランダ商館長一行が滞在する長崎屋にて、令和の今はアンテナショップのイベントにて様々な交流が生まれているとご紹介しました。
その際に取り上げた気になるイベント「496ワイナリー6周年&『ヴィンヤードに吹く風 』出版 発表会」に参加するべく、4月末に銀座NAGANOさんを訪れました。

目次

木のぬくもり感じる、銀座NAGANOイベントスペース

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


これまでに幾度となくアンテナショップを訪れている私ですが、イベントスペースへと足を運ぶのは今回が初めて。
銀座NAGANOさんの2階には、階段の左右に観光インフォメーションコーナーと長野の別荘をイメージしたイベントスペースが広がっています。
イベントスペースには長野県産の木材がふんだんに使用されており、木のぬくもりが感じられる落ち着く空間になっていることは、上の写真から伝わるのではないかと思います。

496ワイナリー6周年の軌跡

イベントの開会時間が近づくにつれ、496ワイナリー(シクロワイナリー)さんを応援している方々、長野をはじめとする国産ワインに注目されている方々が集まり始め、総勢30名ほどの会となりました。
参加者は都内在住の方ばかりかと思いきや、近県、さらには長野県からいらした方も!
この状況を目のあたりにし、496ワイナリーさんにお問い合わせをした際に伺った「ワインは人を繋ぐ飲み物」という言葉を思い出しました。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


イベントの冒頭では、オーナーの奥様の祐子さんより、ワイナリー設立に至るまでの歴史についてご説明がありました。
今年6周年を迎えたワイナリーですが、その設立構想は、オーナーの規之さんが約25年にわたるプロ自転車競技選手を引退し、大きく人生の舵を切った12年前には既にあったといいます。
2014年には千曲川左岸の八重原にて土地の開墾を始め、ワイン用ブドウの苗木約1200本を定植。
2019年に果実酒醸造免許を取得し、ワイナリーを設立するまでの間は、ブドウを育てる傍ら、長野県農業大学校研修部やワイン生産者向けのアカデミーなどに通って農業の基礎やワイン造りについて学び、着々と準備を進めていたそうです。

そのようなお話を聞きながら参加者の皆様が楽しむのは、496ワイナリーさんが丹精込めて醸造した約10種類のワイン。
ワインのラベルには、ワイン造りという第2の挑戦を始めた12年前の辰年にちなんだタツノオトシゴや、クラシカルな自転車をモチーフとした点描画が採用されています。

「運気上昇!?中央区内の辰・龍関連スポット4選」でご紹介した通り、辰年は運気上昇の年!
そして、タツノオトシゴは、繫栄開運をもたらすと言われているということで、496ワイナリーさんのワインはプレゼントにぴったりなのではと思いながらお話に耳を傾けました。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


その他、チェッカーフラッグ(レースの終了を知らせる黒と白の市松模様の旗)がモチーフで、永遠や繁栄、発展を意味し、縁起が良いとされる市松模様のラベルのワインもありました。

しかし、随所にちりばめられたこだわりはこれにとどまりません。
追い抜き競走に由来し、1品種または単一圃場で収穫された1品種のみを使用した「パシュート」、自転車ロードレースの山岳コースで、タイムアウトにならない程度にゆっくり走るために作る集団に由来し、他のワインより時間をかけてゆっくり発酵させた「グルペット」など、ワインの名前にも自転車要素が見て取れます!

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


さらに、これまでに販売されたワインの中には、2人乗りの自転車競技に由来し、2品種を使用したブレンドワイン「タンデム」、団体追い抜きに由来し、3品種のチームワークが生かされたブレンドワイン「チーム・パシュート」などもあり、自転車競技用語がうまくワインの特徴を伝えていることに感嘆の念を抱きます。

そのような元プロ自転車競技選手としてのこだわりや想いがつまったワインのおともは、長野県佐久市にあるチーズ工房「Bosqueso Cheese Lab. (ボスケソ・チーズラボ)」さんが製造した2種類のチーズ、行列のできるお店のパン2種類にクラッカーなど。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


本イベントでは、東御市から応援にいらした花岡市長、オーナーご夫婦の恩師やご友人からの挨拶などもあり、始終和気藹々としたムードが漂いました。

市長挨拶では、東御市と近隣自治体が官民連携の広域ワイン特区「千曲川ワインバレー」に認定されていること、伊勢志摩サミットで東御市産のワインが提供されたことなどについてご紹介があり、中央区にいながらにして東御市におけるワインについての知識を深めることができました。

496ワイナリーさんについては、漫画『マリアージュ 神の雫』に登場するうえ、有名人も評価しているワイナリーであると説明がありました!
そして、チャンピオン経験のある元プロ自転車競技選手ならではの「一度こうと決めたらまっしぐら」なストイックな性格がワイン造りに反映されており、それを奥様が温かくサポートするというチームワークも、496ワイナリーさんの特徴だそうです。

『ヴィンヤードに吹く風』出版発表会

イベントの後半では、『ヴィンヤードに吹く風 』出版発表会が行われました。
貴重な執筆秘話を伺い、原稿や本を読まれた方々からのコメントを交えるなどインタラクティブな会となり、会場は大いに笑いに包まれました。

規之さん曰く、プロの小説家のような出来をあえて意識しないことで、体育会系の個性を生かした自分らしい一冊に仕上がったとのこと。
小説執筆の動機のひとつには、ワインと自転車、そしてそれらの関係について、少しでも多くの方に知っていただきたい、誰かに話したくなる豆知識を楽しく共有したいという思いがありました。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


ヨーロッパでは、プロ自転車競技選手が引退後にワイナリーを経営する例はそれほど珍しくはなく、ワインと自転車の関係は近いものとして認識されているようです。
そう言われてみると、表彰式でシャンパンファイトが行われ、ワインの産地もコースに組み込まれている世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」は、ワインと切っても切り離せない関係にありますね。

しかし、日本ではまだまだワインと自転車はすんなり結びつかないもの同士。
そこで、日本の皆様にもワインと自転車の関係をより近いものと捉えていただくべく、小説では、ワインやロードレースで名高いフランスをも舞台にするといった工夫が凝らされています。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


ワインに土壌や天候、造り手の個性が反映されるように、こちらの小説にも唯一無二の個性や味わいがあるようですね。
下巻の出版もあるかもしれないということで、続きを期待する声が上がる中、惜しむらくイベントは幕を閉じました。

最近、渋谷のとあるミシュラン1つ星フランス料理店にて、496ワイナリーさんの赤ワイン(メルロー)が提供されるようになったそうです。
今後、都内で496ワイナリーさんのワインを楽しめる機会がますます増えるかもしれませんね。
今回初めてアンテナショップで開催されるイベントに参加し、異色の経歴を持つ造り手と交流し、そのワインのファンである方々からお話を伺うことで、前々から気になっていたワイナリーさんの魅力に直にふれることができました。

知る人ぞ知る、中央区におけるワインと自転車の歴史

ここからは番外編になってしまうのですが、本イベントに参加したことがきっかけで気になり始めたことがあります。
それが、中央区におけるワインや自転車の歴史です。
中央区の歴史を見てみると、江戸時代から明治時代になって間もなく築地居留地が設けられ、築地やその周辺エリアはとりわけアメリカやヨーロッパとの交流が盛んな場所となりました。
当時、日本ではまだ馴染みのなかった革靴も、居留地が近いことから需要が高まり、「【遠足シリーズ第13弾】足元からオシャレを♪『成功者』の人生に見る日本の製靴産業史」で詳しくご紹介したように靴業が興ったほど。
では、自転車はどうだったのでしょうか?

1985年に発行された交通史学会の会誌『交通史研究』13巻に掲載されている齊藤俊彦の論文「日本における自転車の製造・販売の始め : (竹内)寅次郎の事績について」では、明治3年5月に東京府の許可を得て「自転車」と称する三輪車の製造・販売を営んだ(竹内)寅次郎という人物が、初めて国産自転車を製造した人物であり、自転車の命名者でもあると結論づけられています。

齊藤が調査にあたり参照した「東京府文書」中には、明治3年4月29日に寅次郎が「自転車」の製造・販売の許可を求めて東京府に出願した文書が収められています。
その冒頭には、「南八町堀五町目儀兵衛地借寅次郎新栄町壱町目地所拝借人嘉兵衛奉申上候」と、自転車製造の拠点となった具体的な場所の記載が見て取れ、その場所は、現在の湊一丁目の交差点の北側付近に相当します。
つまり、日本初の自転車はここ中央区内で製造されたということになるのです!

また、自転車製造の動機として、横浜や築地の居留地に住む外国人が使う乗り物の影響があったと「工夫手続上申書」に記されています。
今回参照したのは40年程前の論文ではありますが、「自転車が描かれた錦絵一覧表」も掲載されています。
齊藤は、「浮世絵版画は、元来、報道性を持っていたが、明治の開化期には、ますます報道的・マスコミ的機能を発揮している」と述べており、自転車がどのように姿を変え日本に定着したのか、時代の異なる木版画・絵画を見比べて学ぶのも面白そうですよね。
今後改めて紐解きたい中央区の歴史となりました。

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~

郷土資料館  1階(写真撮影可)


一方、中央区内のワインの歴史と聞いてまず思い浮かんだのが、区民有形文化財の「明石町遺跡内築地外国人居留地445号遺構出土遺物」
これらが出土した築地居留地45・46・47番は、英国人からフランス人へと所有者を変えた場所で、英国産のマスタード瓶、欧州産(生産国不明)のワインボトル、ジンボトル、サイダーボトルといった出土遺物の一部は、本の森ちゅうおう内にある郷土資料館(1階)に展示されています。

実際に日本人間で飲み物としてワインが流通し始めるのはもう少し後のことですが、飲食物や交通手段という日常生活レベルで早い段階から外国人と接触のあった築地居留地周辺では、思いの外自転車やワインに関する歴史が充実していることに気づくことができました。
こうして調べる機会を作ってくださった496ワイナリーさんのイベントに感謝!

あとがき

 ワインと自転車の関係が面白い!~496ワイナリーイベント参加レポート@銀座NAGANO~


本イベントの取材ならびに本記事の執筆にあたり、496ワイナリーの飯島様ご夫妻にご協力をいただきました。

今年は遅霜の影響で、東御市、立科町、安曇野市ではワイン用ブドウの新芽が枯れるなどの被害がNHKで報じられました。
また、496ワイナリーさんの畑でも甚大な被害が確認されており、その様子は信濃毎日新聞の紙面およびデジタルで大きく取り上げられました。
そのような困難な状況下にもかかわらず、ご丁寧にご対応くださったことに心より感謝し、496ワイナリーさんをますます応援したいと思いました。

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ご紹介スポット情報

銀座NAGANO
住所:東京都中央区銀座5丁目6-5 NOCOビル 1・2・5F
電話番号:03-6274-6015(代表)
営業時間:10:30~19:00(1F・2F)
定休日:年末年始
公式ウェブサイト:https://www.ginza-nagano.jp/