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2025 風に靡く 高貴な薄紫色の優美な彩り

 2025 風に靡く 高貴な薄紫色の優美な彩り

 フジ(藤)は日本原産のマメ科の蔓性落葉低木。         蔓性の枝を藤棚に這わせ、簪のように垂れ下がる花房を観賞する「藤棚仕立て」は、風情があり優美な空間をつくりだします。   春から夏にかけ、二つの季節に跨って咲くため「二季草(フタキグサ)」の異名を持ち、風に靡いて揺れる様を波に譬えて「藤波」と表現され、万葉集にも多数詠まれ、古より親しまれてきました。     また観賞用としてだけでなく、丈夫な蔓は籠など生活資材に繊維は衣服(藤織り/藤布)にも活用され、暮らしに深く関わってきました。日本固有種には、茎が上から見て右巻きで、大阪の野田が名所だったので「ノダフジ」と呼ばれる種と、左巻きの「ヤマフジ」があり、一般には両種をフジと総称しているようです。        浜離宮恩賜庭園内には、延遼館跡、潮入の池 お伝い橋/小の字島などに藤棚が設えられ、大半がヤマフジと聞き及びますが、お伝い橋北端の藤棚には、ノダフジ系の黒龍藤の突然変異とされ、雄しべの弁化が著しく、蕾は濃紫色で開花が進むにつれ花色は淡くなりグラデーション豊かで、玉咲き(抱え咲き)の花房は蜜で、ブドウ房を彷彿とさせる独特の形状の「八重黒龍藤」(別名牡丹藤 左上画像)が植栽され、何れも咲き揃い始めています。                  藤は、寿命が長く繁殖力が強く、家紋として好まれ、名門藤原氏と縁の深い「下がり藤」は伝統と格式を誇り、浄土真宗本願寺派本山「西本願寺」の寺紋ともなっており、2024年度に発行された新五千円札の裏面の図柄には、基調となっている紫の色合いと馴染むことから、藤の花が採用されています。