やすべえ

日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

9月に入っても厳しい残暑が続くこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
先月、東日本橋一丁目村松町会の皆様が日本橋の老舗「伊場仙」と「江戸屋」を見学されると聞き、私も同行させていただきました。中央区観光検定を受験するなら、この二つのお店に関する知識は欠かせませんし、普段から近くを通ることも多いため身近に感じていましたが、直接お話を伺うのは初めて。浮世絵や江戸文化が好きな私にとって、とても貴重な一日となりました。今回のブログでは、その様子をご紹介します。

見学記の前に ― 中央区「まちかど展示館」について

中央区が推進する文化発信事業「まちかど展示館」は、老舗や地域文化を“まちの展示館”として開放し、生活の中で触れられる文化資源として紹介する取り組みです。現在約30館が登録されており、その中には「伊場仙浮世絵ミュージアム」や「江戸屋所蔵 刷毛ブラシ展示館」も含まれています。観光客や区民が気軽に立ち寄れる仕組みが魅力です。
ちなみに、第17回中央区観光検定には「伊場仙(   )ミュージアム」の空欄を問う問題がありましたが、私は浮世絵と扇子・団扇のつながりを理解しておらず、答えられませんでした。今回の見学でその関係がよくわかり、大きな学びとなりました。

伊場仙

最初に訪れたのは、扇子・団扇の老舗「伊場仙」。創業は天正18年(1590年)、豊臣秀吉が天下を治めていた時代にまで遡ります。歴史あるお店と知ってはいましたが、これほど古いとは驚きでした。

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

扇子や団扇がならぶ、伊場仙の店舗

 

日本橋小舟町の店舗には「伊場仙浮世絵ミュージアム」が併設され、貴重な浮世絵を間近で鑑賞できます。村松町の方々も、地元に住んでいながら訪れたことがない方が多かったようでした。飾られた浮世絵の数々は本当に宝物のようで、浮世絵好きの私にとって幸せな時間でした。

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

店舗に併設する「伊場仙浮世絵ミュージアム」

 

現在放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう」でも、版元・蔦屋重三郎や喜多川歌麿らの浮世絵が注目されています。伊場仙が浮世絵を扱っていた理由について、扇子や団扇の絵柄に人目を惹くデザインが必要であり、版元や浮世絵師が欠かせないビジネスパートナーだったからだと伺いました。デザインには美しいものだけでなく、世相の風刺や役者のスキャンダルといった話題性のある題材もあり、まるで現代の週刊誌やSNSのよう。浮世絵の奥深さを改めて実感しました。

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

珠玉の浮世絵。浮世絵好きにはたまりません。

江戸屋

次に訪れたのは、享保3年(1718年)創業の「江戸屋」。刷毛とブラシの専門店です。日本橋大伝馬町にある店舗は、大正期のアールデコ調建築で、関東大震災後に再建された国登録有形文化財。正面は刷毛を模したユニークな看板建築になっています。旧日光街道沿いに位置し、かつては日本橋の賑わいの中心地だったとのこと。蔦屋重三郎の耕書堂があった通油町もすぐ近くです。

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

刷毛の形を模した店舗正面

 

店内に入ると、所狭しと並ぶ刷毛やブラシの数々に圧倒されます。歯ブラシのような日用品から化粧用、髪用、清掃用、塗装用、さらには版画用まで、その種類は数千。用途や要望に応じて作られる特注品もあるそうです。普段意識することの少ない道具ですが、これほどの世界が広がっていることに驚きました。

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

たくさんの刷毛とブラシに圧倒されます

 

 日本橋の老舗を巡る — 伊場仙と江戸屋の魅力再発見

展示用の刷毛の数々

取材裏話

伊場仙さんによれば、蔦屋重三郎は現代でいえばイーロン・マスクのような人物。ちょっと、くせがある。でも、人が考えつかないようなことを思いつき、実現していく。なるほど、納得です。
一方、江戸屋さんは定休日にもかかわらず見学に応じてくださいました。村松町の皆さんは自分用のお土産にブラシを買いたそうでしたが、その日は購入できず残念そうでした。

最後に

この度は村松町の皆様のおかげで、貴重な機会に同行させていただきました。改めて感謝申し上げます。
伊場仙も江戸屋も、身近な存在でありながら知らなかったことが多く、直接お話を伺ったことで理解が深まりました。また、「まちかど展示館」のような取り組みを通じ、中央区には今も多くの老舗や文化を感じられる機会があることを再認識しました。中央区は、本当に魅力あふれる街だと改めて実感しました。

(ブログ掲載にあたり、東日本橋一丁目村松町会様、伊場仙様、江戸屋様から許可をいただいております)