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『まだ結婚できない男』と第2井上ビル(茅場町)

昨年末に最終回を迎えた阿部寛主演『まだ結婚できない男』(以後、『まだ』と表記)、面白いドラマでしたね~。もちろん観る人によっては賛否両論あったのかもしれないですが、私はああいった「ほんの少し(ほんの少しというところがポイント)」だけ現実離れしたコメディは大好きです♪

それはともかく、ドラマの内容ではなくてロケ地のお話です。

 

 『まだ結婚できない男』と第2井上ビル(茅場町)

前作の『結婚できない男』では、兜町の山二証券ビルが、阿部寛さんの建築設計事務所が入居しているビルとして使われたばかりか、タイトルバックとして毎回使用されるなど、とても目立っていました。

前作から13年経ったという設定の今回の『まだ』では、建築設計事務所のほうは経営規模拡大に応じてかロケ地も横浜の日本大通沿いのビルに変更されていました。が、もう一方の主役といっていい吉田羊さんの弁護士事務所として、茅場町の第2井上ビルが使われていたのです。

 

 

実は第2井上ビル、『まだ』だけではなく、多くのドラマや映画、音楽PVのロケ地として使われています。今回、第2井上ビルのオーナー、井上商事株式会社の井上賢一社長に詳しいお話を伺うことができましたので、そのお話を中心にご紹介してみます。

第2井上ビルの歴史

第2井上ビルの歴史 『まだ結婚できない男』と第2井上ビル(茅場町)

住所は中央区日本橋茅場町2-17-13、霊岸橋のたもと、亀島川沿いに建つビルです。

 

このビル、竣工したのは昭和2年(1927)、なんと築93年の物件です!関東大震災(1923)後の復興ビルのひとつとして、あの日証館ビルとほぼ同時期に建てられたようです。中央区の近代建築物調査100選にも選ばれていますね。

 

完成した当初は「塚本ビル」という名称だったようで、戦後の1952年から1978年まではセーラー万年筆の本社ビルとして使用されていました。その後、先代からの知人ということもあり、縁あって井上社長のお父様が取り壊されかかったこのビルを取得。昭和2年からのトラック運輸業に加え貸ビル業を行っていた井上商事の新しい顔になりました。
ただ、当初は仕様が古いままだったこともあってあまりテナントに恵まれず、経営には多少ご苦労があったとのことです。

 

転機になったのは1989年。現社長が、竣工当初の外観や内装などを活かしながらもお洒落なアンティークビルとというコンセプトのもと内外装の大リニューアルを行ったのだそうです。1Fに井上商事直営の「WallStreet」(写真右)/創作イタリアン(現在ではオーガニック料理と豊富なドリンクで有名)の飲食店を創業したのもこの年です。

 

それ以降、ドラマなどのロケ地として注目されるようになり、クリエイター、デザイナーなどを中心とした、アーティスト系の入居者で、現在も満室の状態が続いています。

 

ロケ地のメッカ:第2井上ビル

1992年に公開された『ありふれた愛に関する調査』(出演/奥田瑛二・世良公則・津川雅彦など)という映画がありますが、このときにウォールストリートが、ある事件の現場として登場したのが第2井上ビルの本格的なロケ地史のはじまりだそうです。

 

その後数十本のドラマや映画などで使われるようになりましたが、なかでも弁護士事務所として使われることが多いようです。『まだ』でもそうでしたが、比較的最近の作品に限っても、

白い巨塔(2019)
悪魔の弁護人 御子柴礼司(2019)
家族の旅路(2018)
女はそれを許さない(2014)
ステップファザーステップ(2012)

など全て弁護士事務所として使われています。(白い巨塔は2019年以前の2本のドラマ(フジTV)でも使われています)

 

昨年放映され、津川雅彦さんの最後のドラマとなった「松本清張ドラマスペシャル『疑惑』」でも、米倉涼子演じる弁護士の事務所になっていました。

 

使用される映像はビルの外観・内観の一部、屋上での撮影がほとんどですが、2002年にドラマ化された「サイコドクター 楷恭介」(主演/竹野内豊)では、なんと竹野内豊のメンタルクリニックが第2井上ビルに入居しているという設定で、室内も含めビルの全てを使ってのロケでした。ビルのエントランスから階段、廊下、室内が見て取れます。事務所の窓を開けて亀島川を眺めているシーンなどもありました。

また、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(2009:主演/小池徹平)」でも本格的なロケが行われました。

 

井上社長のお話は尽きません

井上社長のお話は尽きません 『まだ結婚できない男』と第2井上ビル(茅場町)

井上社長はお祖父様の代から中央区と深いつながりがあったこともあり、第2井上ビルそのもののお話だけでなく、1964年の東京オリンピックの頃の中央区の風景、関東大震災後からの耐震基準の歴史、中央区の人口問題などなど、中央区にまつわる興味深いお話をたくさんお伺いすることができました。

この記事を借りて心よりお礼申し上げます。

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第2井上ビルだけでなく、第1井上ビル(本社のあるビル。第2井上ビルのすぐ近くにあります)など、井上商事所有の賃貸物件と店舗案内などが掲載されています。