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中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

今月(7月号)の「東京人」は久しぶりの水都テーマで、「橋と土木」の特集です。

「橋と土木」という文字を見ただけで心躍るというドボク系の血を引いているかたもいらっしゃるかもしれないですが(笑)、フォーカスされている橋の多くが中央区とつながる橋だったりもするので、広く中央区ファンにとっても見逃せない仕様になっています。

全部で100ページ近くが「橋と土木」関連のコンテンツになっていますが、なかでも中央区の香りが色濃く漂うコンテンツをいくつかピックアップしてご紹介してみます。

 

各画像については・・・販売中の出版物のページをそのまま掲載するというのはいかがなものか??とも思い、あくまでも「ページを広げている光景」として掲載してみました。

巻頭特集:浮世絵で歩く「橋と土木」

巻頭特集:浮世絵で歩く「橋と土木」 中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

実用的な建造物でありながら芸術作品としての側面も持っている「橋」についての、3人の有識者による鼎談です。

紅林章央さん:元東京都建設局橋梁構造専門課長でもあったバリバリの土木専門家。
ヴィヴィアン佐藤さん:建築学科出身のアーティスト・文筆家。
渡邉晃さん:太田記念美術館主任学芸員でもある、芸術学博士。

・・・というお三方ですが、皆さん専門分野に限らず学際的な知見をお持ちで、読むだけでも楽しい記事でした。

 

取り上げられている橋を列挙すると 両国橋 永代橋 吾妻橋 新大橋 万世橋 浅草橋 柳橋 日本橋 京橋 新橋。 ・・・ほとんど中央区の橋巡りとでも言えそうです♪

掲載されている橋のそれぞれについて、構造形式の変遷がもれなく添えられていることや、錦絵だけでなく写真画像でその後の変化も掲載されているなど、どことなく理系・ドボク的なこだわりも感じます(^^)。

古絵葉書で見る橋梁の構造美

古絵葉書で見る橋梁の構造美 中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

9枚の美しい古絵葉書をもとに歴史的な背景なども含めた詳しい解説です。

絵葉書を列挙すると、常盤橋 吾妻橋 浅草橋 日本橋 呉服橋 清洲橋 聖橋 数寄屋橋 千代橋。 これまたおなじみの橋たちが多いですね。

 

解説は前出の紅林章央さんです。

ほかにも色々

ほかにも色々 中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

■隅田川復興橋梁・近代東京の橋を作った人たち

「復興橋梁群」の写真にもつい見入ってしまいますが、「近代東京の橋を作った人たち」というコンテンツでは、橋そのものが鑑賞の目的にもなるような近代的な橋が生まれてきた経緯を、樺島正義、田中豊、太田圓三という3人の異才の技術者の業績を交えて解説しています。

解説は中井祐さんという東大の土木・都市デザインの先生です。

 

■江戸の橋工法と文化

両国橋・日本橋が木橋の時代であっても、それぞれ非常に「災害に強い」優れた設計であったことなどが解説されています。

解説は江戸関係の著書も多い波多野純先生です(建築系)。

 

■橋梁原図から設計者の意図を読み解く

聖橋・八重洲橋・三原橋・勝鬨橋について大正期から昭和初期の図面を公開しての解説です。

図面を見て感慨に浸れるようになるには、楽譜や電子回路や数式を見ただけで美しいと感じられるようになるくらいの知識と経験が必要なんだろうな・・・という気もしますが、素人目にも勝鬨橋の設計図は建築物というよりも船や飛行機の設計図を髣髴するものがあります。

解説はデザイン関係で各種の賞を受賞している建築家の渡邉竜一さんです。

 

モーターボートに乗って「川面から眺める楽しみ」

モーターボートに乗って「川面から眺める楽しみ」 中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

解説:石坂善久さん

 

実は私、このかたの著書を愛読していた時期がありました。自家用車ならぬ自家用モーターボートで東京の川や運河を駆け巡るという『東京水路をゆく』という本です。(上図右)

 

東京の水路があまりにも魅力的に語られているので、つい、勢いで小型船舶免許を取ってしまったという過去があります・・(^^)

 

そんな著者が「水面から眺めた橋」について詳しく語ってくれています。取り上げられている橋たちの中央区比率は若干低めですが、「橋を裏から見上げる楽しみ」などが良くわかります。

 

暗橋探訪

暗橋探訪 中央区ファンに嬉しい今月の「東京人」

(自称)中級暗渠ハンターの高山英男さんによるコラム的な記事なのですが、妙に刺さるものがありました(^^)。すでに橋としての機能を失いながら色んな形で姿を留めている橋たちを「暗渠」になぞらえて「暗橋」と名付け、3つのタイプに分けています。

 

【剥製】モニュメントや標本として、架かっていた場所から移動されて展示されている暗橋

【囲われ】暗渠化された緑道・公園内で見られる暗橋

【野良】たまたま街角に残ってしまった暗橋

 

「囲われ」と「野良」の違いは微妙な場合があるかもしれないと思いましたが(稲荷橋の親柱はどっちだろう?、など)、剥製になった橋(明治村で飾られている旧新大橋など)も含めて、中央区では思い当るフシ(いや、橋)が多過ぎます!(笑)

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(ここから下は本誌とは無関係で、私の雑感です)

「暗橋」はすでに橋としての機能を失ってしまったものを指しているようなのですが、橋としての機能は失っていないものの、「本来の姿ではない」という形態もありますね。勝手にネーミングしますと、

 

【砂漠化】もともとは川に架かっていたはずなのに、気が付いたら下が道路になっていた橋(久安橋など多数)

【転生】もともと別の場所に架かっていたはずなのに、気が付いたら別の場所で別の名前になっていた橋(南高橋になった旧両国橋とか)

 

旧弾正橋に至っては、道路の上に転生したというレアな例になります。おまけに現:弾正橋の上には旧弾正橋のミニチュア(【剥製】)が飾られているという激しく稀有なパターンですね。

書誌データなど

気になったコンテンツのみかいつまんでご紹介しましたが、詳しい目次は都市出版(株)さんのWebサイトを見てご確認ください。(このページは来月になると来月号の目次になると思われます・・

 

書誌データは下記のとおりです。

月刊東京人 2020年7月号(通巻:No.427)
出版社 都市出版株式会社
ASIN B08924DGLF
発売日 2020/6/3
価格 950円(税込)